2011年6月号掲載
いまアメリカで起きている本当のこと 日本のメディアが伝えない世界の新潮流
著者紹介
概要
今、景気回復のために膨大な財政赤字を生み出した米国では、ドルに対する不信やインフレへの懸念から、金本位制の復活が議論されている。また、オバマ政権の“弱腰外交”の結果、中国は米国に挑戦的な態度をとるようになった。このように、内外に問題を抱える米国は、今後どうなっていくのか? 米政府の情報に精通する日高義樹氏が、その動向を報告する。
要約
米国は日本が核武装してもかまわない
私は40年以上、ワシントンを取材してきているが、今、日米関係は最悪の状態にある。米政府と日本の民主党政権の間に会話は全くない。
その原因について菅首相は「普天間問題だ」と考えているが、そうではない。
米政府が日本の民主党政権に対する強い不信を持ち、日米間の対話が成立しない最大の理由は、核兵器に対する考え方が対立していることだ。
米政府は、普天間は日本の国内問題だと考えている。自民党前政権との約束を破ったことに対して不満はあるが、さほど深刻には考えていない。
だが、核兵器の持ち込みに反対し、核兵器持ち込みの秘密協定を暴露したことには心底ハラを立てている。
ハドソン研究所の同僚は、こう言う。
「日本の民主党政権が一体何を考えているのか、まるでわからない。米国の核兵器に反対するのであれば、独自の核兵器を持つのか、あるいは核兵器の扱いについて米政府と改めて話し合いをするのか、中国の傘の下に入るつもりなのか。あるいは全く何の考えもなく反対しているだけなのか」
米国人には、国の安全保障について何の構想も戦略も持たない政権というものの存在が信じられないのである。
TPPでアジアを米国のものにする
日本ではアジアの新しい経済同盟として、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が注目されているが、この協定はもともと日本が中心になって進めてきたASEANなどに代わり、米国が主導する地域協定を作ろうという構想から始まっている。
「オバマ大統領とその周辺は、アジア極東の安全を守っているのが米国の軍事力であるにもかかわらず、日本が中心になって経済的地域協定を作り、米国を除け者にしているのはおかしいと考えている」。こういった話を経済専門家がしきりにしていたところに、このTPPの構想が出てきた。
ワシントンの専門家らによれば、最初オバマ大統領は、米国が主導し、中国と協力して新しい地域経済協定を作ろうと考えていた。だが中国を恐れる東南アジア諸国の反対が強く、中国側も積極的でなかった。その後に出てきたのがTPPだった。