2012年7月号掲載
21世紀のキャリア論 想定外変化と専門性細分化深化の時代のキャリア
著者紹介
概要
かつてキャリアは、会社の人事制度などに基づいて築くものだった。だが今は、多くの分野で深い専門性が求められる一方、リストラや事業の撤退といった想定外の変化が起こる。本書は、こうした時代におけるキャリアのあり方を述べたもの。自分のキャリアを自ら切り開く「キャリア自律」という考え方をベースに、新たなキャリア環境にどう対処すべきかを説く。
要約
21世紀のキャリア環境とは?
21世紀のキャリアとはどのようなものか。
「想定外変化によって生じる予期せぬキャリアチェンジ」と「専門性の細分化深化」、この2つが同時進行するのが、21世紀のキャリア環境の特徴である。
想定外変化が強くても、専門性がそれほど深くない時には、どんな状況にも対応できるスーパー・ジェネラリストに皆がなればいい。
深い専門性が必要になったとしても、想定外変化が起こる確率が低ければ、一生をかけて1つの専門性を深掘りするという人材が増えればいい。
だが問題なのは、専門性の深掘りをしている間に、その専門性が必要でなくなってしまうことだ。
つまり、この2つが同時に起こるという、ある意味矛盾する流れをどう受け止めるのかというのが、21世紀のキャリア環境の最大の課題である。
なぜ想定外変化が増えるのか
では、なぜキャリアに大きな影響を及ぼす想定外変化が起こるのか。
最大の理由は、日本経済がもう成長しないということだ。長期的に見た場合、日本経済はもう右肩が上がらない。そうなると、事業や人員のリストラなど、思い切った手を打たざるを得なくなる。
また、グローバル化の波によって、従来のビジネスモデルや求める人材像の大きな変更を迫られるような変革が起きている。これも理由の1つだ。
例えば、システム開発はインドにどんどん流出している。こうして仕事が海外に流出すると、日本国内でそのキャリアがなくなってしまう。
事業撤退もキャリアの変更を余儀なくさせる。ある特定の分野で技術を積み重ねてきても、突然会社がその分野から撤退するということが起こる。