2012年9月号掲載
スクリューフレーション・ショック 日本から中流家庭が消える日
著者紹介
概要
「スクリューフレーション」とは、スクリューイング(中流層の貧困化)とインフレーションを掛け合わせた造語で、中流層の貧困化とインフレが同時に起きること。企業の業績は伸びても給料は上がらず、一方で食料品やガソリン等の生活必需品が値上がりして生活は苦しくなる…。米国で発生し、日本でも起きつつある新たな経済現象に、気鋭のエコノミストが迫る。
要約
スクリューフレーションとは何か
1990年初頭のバブル崩壊から経済が停滞したままの現在、多くの日本人が「働いても、生活が楽にならない」と感じている。
景気には循環がある。不況の後には好況が訪れ、給料が増えることで人々は豊かさを感じる。だから、不況の時も「いずれ景気は回復するから」という希望を胸に頑張ることができる。
ところが、ここ何年かの状況を見ていると、好況の時にも給料は思うように上がらず、不況の時には一層の厳しさを強いられるようになった。
かつて「1億総中流」と呼ばれた日本から、「豊かさ」が失われつつある。なぜか?
その原因として、世界経済で起きている新たな事象に日本が巻き込まれていることが考えられる。
生活水準が低下する米国の中間層
「豊かさが実感できない」社会の背景にあるもの、それは「スクリューフレーション」だ。
スクリューフレーションというのは、中間層の生活水準の低下を意味する「スクリューイング」(Screwing)と、物価の上昇を意味する「インフレーション」を掛け合わせた造語である。
元々は米国発の言葉であり、米国経済が抱える問題を分析することで生まれた言葉だが、筆者自身は近い現象が日本でも起きていると考えている。
実質GDP(国内総生産)によれば、米国経済は過去30年間で倍以上に拡大している。だが、実質賃金はほとんど伸びが見られない。国の発展や企業の好業績が給料に反映されていない。その一方で、食料品やエネルギー価格は高騰している。
給料が伸びない中で、生活に不可欠な食料品やガソリン代などの負担だけが増えていくため、中間層の人たちが使えるお金は確実に減っている。
つまり、GDPが伸び、企業業績が伸びる中で、本来は豊かになるべき国民が豊かさを享受できないどころか、生活水準の低下へと向かっている現象こそが、スクリューフレーションなのである。