2012年9月号掲載
人が育つ会社をつくる 新版 キャリア創造のマネジメント
著者紹介
概要
日本の組織では、人が育ちにくくなりつつある。その原因を成果主義に求める人は多い。成績に追われ、人を育てる余裕が失われたという。また、人員削減で教育まで手が回らないとの声もよく聞く。だが著者は、人が育たないという問題の本質は、ずっと根深い所にあると指摘。それを解明し、人の成長を促す仕組みづくりを提言する。2006年刊の同名書の改訂新版。
要約
なぜ今、組織で人が成長しにくいのか
日本の組織で、人が育ちにくくなっている ―― 。
かつて日本の組織には、人を育てるメカニズムが内在していた。ところがここにきて、その強みが機能しなくなっている。なぜか?
暗黙の人材育成機能だったOJTの崩壊
先輩や上司が意欲を持って、後輩を職場の中で教育し、育てるという、「縦序列の指導伝承型OJT」は、日本が得意とする指導育成方法だった。
そして、それを可能にしていたのが、年功序列と終身雇用だった。だから、その要因が崩れたことで、指導伝承型のOJTが機能しなくなったという言い方は、あながち的外れではない。
だが、より重要な要素は、組織の中にある。それは、組織の上下関係が流動化してきたことだ。
組織がこれまでのようなピラミッド型の時は、自分たちの部に配属された新入社員とは5年先、10年先も上下関係が維持されるから、じっくり育てようというモチベーションを持ちやすかった。
だが、プロジェクト型組織になると、上司と部下の関係は一時的なものになり、部下を育てるモチベーションが失われがちになる。
フラット化の進展もまた、指導伝承型OJTを困難にしている。
組織から主任や係長といった細かい序列を排除するのがフラット化だが、そうすると新入社員も先輩も、同じ階層に位置することになる。
そこには明確な上下関係がないから、そうしたものをベースに成立していた、先輩の「厳しく鍛えてやろう」という意識が薄れてしまう。
IT化が職場に迫る変化
IT化が進み、個人の仕事がブラックボックス化したことも、縦序列組織で人が育つことの阻害要因となっている。