2022年2月号掲載
チームが自然に生まれ変わる ―― 「らしさ」を極めるリーダーシップ
著者紹介
概要
チームメンバーの行動を変えるのに必要なのは、やる気やノルマではない。「認知」を変えれば、彼らは自ら動く。こう述べる2人の著者が、認知科学に基づく「内因的な原理によって人を動かす方法」を説く。働く人々の価値観が多様化する現代、部下のものの見方を変え、チームを進化させる原則を示したリーダーシップ論。
要約
内側から人を動かす
「やる気がない」「責任感が足りない」「言われたことしかやらない」…。
リーダーには部下に関する様々な悩みがある。これを解決しようとする時、「どうやってモチベーションを高めればいいか」という発想にとらわれ、最近の仕事ぶりを褒めたり、外的刺激を与えたりして、行動を変えようとしがちだ。だが今日、こうしたやり方はうまくいかなくなっている。
「人の心を動かすもの」が変わった!
外因的な働きかけに基づくリーダーシップは、もはや「悪手」となりつつある。
その理由の1つは、外部から働きかけて部下を動かそうとする手法は、今日では「ハラスメント」になるリスクを抱えていることだ。「組織人としての責任感」などに訴えかけるやり方は、たとえ本人のためを思ってであっても、部下にはネガティブな受け止め方をされる可能性が高い。
また、「VUCA(ヴーカ)」といわれる環境の変化も要因として挙げられる。VUCAとは変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を意味する英字の頭文字をつなげた造語で、今の時代環境を端的に表す言葉だ。
かつて、多くの働き手は似たような価値観をもっていた。しかし、VUCAな世界では共通した価値観が失われ、個人の楽しさや成長、好奇心などに重きが置かれるようになる。給料が上がることを伝えても、もはや誰もがやる気になるわけではない。人を動かす価値観の中心が、「外的なもの」から「内的なもの」にシフトしているのだ。
従って、リーダーは「内因的な原理によって人を動かす方法」を実践していかねばならない。
「内面から人を動かす」とはどういうことか
内側から人を動かす際の原理は、2つある。
1つ目は「ゴール」だ。人を動かす内的な刺激として思い浮かぶのは、楽しさや好奇心といったものである。だが、感情というのはその場限りのものになりがちで、持続性に欠ける。人を持続的に動かすには、ゴール(目的や目標)が必要になる。
2つ目は「エフィカシー」。これは効力とか効能を示す言葉だが、本書ではセルフ・エフィカシー(自己効力感)の意味合いに限定している。
自己効力感とは「一定の行為・ゴールの達成能力に対する自己評価」であり、「自分はそれを達成できるという信念」である。