2013年1月号掲載
男性不況 「男の職場」崩壊が日本を変える
著者紹介
概要
「男性不況」とは、米国生まれの言葉で、男性の失業率が女性を上回り、かつその差が拡大する、不況下の状況を表す。著者は、日本でも男性不況が着々と拡大しており、少子高齢化や格差の拡大、消費の低迷など、様々な問題の原因になっていると指摘。なぜ、こうした不況が起きたのかを解き明かすとともに、男性不況の結果、日本に何が起きているのかを見極める。
要約
「男性不況」とは何か?
今、日本で、非常に重大な変化が起きている。
男性の職場が消えてしまい、働きたくても働き口が見つからない男性が町中に溢れる社会現象 ――「男性不況」が起きているのだ。
米国生まれの男性不況が日本を襲う
もともと「男性不況」という言葉は、2009年に米国ミシガン大学のマーク・ペリー教授が提唱し始めたもので、男性の失業率が女性を上回り、かつその差が拡大する不況下の状況を表す。
当時の米国は、前年に起きたリーマンショックの余波を受け、失業者が急増。中でも、男性の失業者が大幅に増加した結果、女性の失業率を最大で2%以上も上回る事態になり、頻繁に男性不況という言葉が使われ始めた。
その後、景気の回復につれ失業率の差は縮まり、この言葉は米国ではあまり話題にならなくなった。
だが日本では、男性不況は着々と拡大し、男性失業率が女性失業率を上回る事態に陥っている。
減る男性雇用と、増える女性雇用
日本の場合、1997年が労働市場のピークで、それ以降縮小の傾向が続いている。2011年までの14年間で313万人も就業者が減ったが、実にその91%にあたる、285万人が男性就業者だ。
就業者の減少が特に著しいのが製造業と建設業で、「いざなみ景気」が始まる02年と比較すると、それぞれ205万人、145万人少なくなっている。
当時の男性就業者の4割近くがこの2業種に集中していたので、製造業と建設業の就業者減が、男性の就業者が減った最大要因なのは間違いない。
このように雇用者の減少傾向が続く中、1業種だけダントツに雇用者を増やしている業種がある。医療・福祉だ。その数は、02~11年の9年間で178万人増と、他の業種とはケタが違う。
この、医療・福祉の分野での男女の雇用者の構成比を見ると、約8割を女性が占めている。