2013年3月号掲載
日本は赤字国家に転落するか
著者紹介
概要
産業の空洞化など、構造的な問題を抱える日本経済。このままだと、経常黒字から経常赤字、供給過剰から供給不足への転換の下で、円高から円安、デフレからインフレ、金利上昇という大転換が起こる ―― 。外資系証券会社勤務のエコノミストが、近未来の日本経済を見通し、問題を解決しないと、遠からず“一流の経済大国”の座から陥落する、と警鐘を鳴らす。
要約
国際収支大幅悪化の衝撃
日本経済は、2003年から07年にかけて比較的力強い回復基調を辿った。この景気回復は、輸出拡大と内需成長の好循環によってもたらされた。
しかし、リーマン・ショック後の日本経済は、輸出の激減と輸入の増加に見舞われた。その結果、11年には31年ぶりの貿易赤字に転落、12年には貿易赤字がさらに増加した。
我々は、この日本の貿易赤字国化をどう捉えればよいのだろうか。
筆者の考えは、足元の貿易赤字は一過性のものではなく、構造的なものであるというものだ。
そして、貿易赤字が拡大を続ければ、いずれは所得収支の黒字(日本の対外資産の運用収益)を食いつぶし、経常収支も構造的な赤字に転ずる。
すなわち、本書のタイトルにある「赤字国家」―― 経常収支が構造的あるいは持続的に赤字に転落した国となる。
エネルギー輸入増が原因ではない貿易赤字
日本で何が起きているのか。
まずは、対外収支の現状を概観してみよう。
巷間、貿易赤字化や経常収支黒字大幅減少の原因としてよく取り沙汰されているのが、東日本大震災に伴う原発停止の影響である。停止を受けて火力発電所をフル稼働させているため、化石燃料の輸入が膨らんだという説明だ。
だが、本当にそれだけが原因なのか。
そもそも経常収支とは、貿易収支、サービス収支、移転収支、それに所得収支を足し合わせたものを指す。