2013年7月号掲載
これから50年、世界はトルコを中心に回る トルコ大躍進7つの理由
著者紹介
概要
急速な経済発展を遂げ、世界の投資家たちの注目を集めるトルコ。中東のリーダーとして、近年、飛躍的に国際社会での存在感や発言力が高まっており、世界の識者たちは「今後50年、世界はトルコを中心に回るだろう」と予想する。争いの絶えない中東にあって、なぜトルコだけが躍進するのか? その理由を、アラブ・イスラム圏研究の第一人者が解き明かす。
要約
大躍進の陰に、3人のカリスマあり
人口7400万人。オスマン・トルコの古い歴史を誇る一方で、29歳以下の若年層が総人口の約半分を占める若い国、それがトルコ共和国である。
有能な労働力、整備されたインフラ、そして大規模な国内市場。これらが相まって2017年までのGDP成長率は推定6.7%と、急速な経済成長が期待されている。世界の識者たちは「今後50年、世界はトルコを中心に回るだろう」と予想する。
「アラブの春」という民主化革命の嵐が吹きすさぶ中東にあって、なぜこの国だけが急激な経済発展を見せるのか? その理由を解き明かすべく、トルコという国家を俯瞰してみよう。
父親役のエルドアン首相
トルコという国家を家庭に例えると、父親がエルドアン首相、母親がギュル大統領、ダウトール外務大臣が知恵者の叔父さんといった役どころだ。
まずは父親役のエルドアン首相を紹介しよう。正式にはレジェップ・タイイップ・エルドアンといい、1954年生まれ。第59~61代首相である。
大学在学中から政治活動を開始し、表舞台に登場したのは94年、40歳の時だった。この時、イスタンブール市長に当選した。
市長在任中には、「この街が国際観光都市として恥ずかしくないような街にする」と宣言してイスタンブールの美化に努め、その人柄と行動力で市民の人気を勝ちとった。同時に、「イスラム法の召使い」を自称するなど、トルコを覆う世俗主義に反発する言動が随所にうかがえた。
例えば、西洋式の新年の祝いや水着の着用を批判。また、アルコールの禁止を提案した。彼の言動にはイスラム主義の色合いが強くにじんでいる。
決定的だったのは97年にイスタンブールで開かれた政治集会での詩の朗読である。この時エルドアンは、「モスクは我が兵舎。ドームは我がヘルメット。ミナレット(モスクの尖塔)は我が銃剣」と、イスラム賛美の詩を公衆の面前で朗読したのだった。
結果的に、イスラム原理主義を扇動したとして告発され、4年半の実刑判決を受けて入獄した。
釈放後、現在大統領を務めているギュルとともにAKP(公正発展党)を結成。紆余曲折を経て、2003年に第59代の首相の座に就いた。