2013年9月号掲載
生きる力 森田正馬の15の提言
- 著者
- 出版社
- 発行日2013年6月25日
- 定価1,100円
- ページ数200ページ
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著者紹介
概要
森田正馬(1874-1938)は、対人恐怖や心身症など、今日でいう神経症の治療法、「森田療法」を20世紀初頭に創出した。神経症的な要素は、大なり小なり誰もが持ち、彼の提言は患者の他、普通の人にも参考になる点が多い。目的本位、無所住心、自然服従…。人生を無理なく、そして豊かに生きる上で指針となる正馬の言葉を、小説家で精神科医の著者が読み解く。
要約
人生に効く、森田療法
20世紀の初頭、森田正馬(1874‐1938)は、フロイトの精神分析と全くかけ離れた精神療法、「森田療法」を提唱した。
正馬が生涯かけて追究したのは、今日でいう神経症の治療だった。現代の用語でいえば、対人恐怖、心身症、強迫性障害、パニック障害などだ。
しかし、神経症的な要素は、大なり小なり誰もがもっている。正馬が提唱した治療法は、神経症とはいえない、普通の人にも通用する。普通の人の生活を豊かにする要素を含んでいるのである。
正馬の提言を生活の信条とすれば、悔いのない人生を生きつくすことが可能になる ―― 。
一瞬一生
森田療法の大きな特徴は、患者の過去の来歴を一切問わない点である。通常の精神療法では、生育史や親子関係を重視する。そこに、現在の症状の原因を見いだそうとする。
しかし、森田療法では過去を問わず、ひたすら現在の生きざま、動きのみを問題にする。なぜなら、人が変えられるのは現在、今の事象であり、過ぎ去った出来事ではないからである。
今の目の前の一瞬に、一生をかける。森田療法の真骨頂は、ここにある。
人生を、常に一瞬にかけて生きていく強さをもつと、人生そのものが強靭になる。人生を進む一歩一歩が、いわば道場と化す。人が手にしているのは、過去でも未来でもなく、現在の一瞬のみである。過去と未来に手を加えるのは不可能である。操作できるのは、今の一瞬だけである。
命をこの一瞬に生きる。現在の事柄に対して、自分の力の及ぶ限りの最善をつくす。いたずらに悲嘆や自責、怨みや悔恨を嘆いたところで、過去の時間は戻ってこない。
同様に、まだ来ない将来をあれこれ憂えても、無駄に気力を萎えさせるだけだ。
重荷があるなら、今の一瞬一瞬に命をかけ、重荷の1つ1つを解きほぐしていけばいい。