2013年9月号掲載

生きる力 森田正馬の15の提言

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著者紹介

概要

森田正馬(1874-1938)は、対人恐怖や心身症など、今日でいう神経症の治療法、「森田療法」を20世紀初頭に創出した。神経症的な要素は、大なり小なり誰もが持ち、彼の提言は患者の他、普通の人にも参考になる点が多い。目的本位、無所住心、自然服従…。人生を無理なく、そして豊かに生きる上で指針となる正馬の言葉を、小説家で精神科医の著者が読み解く。

要約

人生に効く、森田療法

 20世紀の初頭、森田正馬(1874‐1938)は、フロイトの精神分析と全くかけ離れた精神療法、「森田療法」を提唱した。

 正馬が生涯かけて追究したのは、今日でいう神経症の治療だった。現代の用語でいえば、対人恐怖、心身症、強迫性障害、パニック障害などだ。

 しかし、神経症的な要素は、大なり小なり誰もがもっている。正馬が提唱した治療法は、神経症とはいえない、普通の人にも通用する。普通の人の生活を豊かにする要素を含んでいるのである。

 正馬の提言を生活の信条とすれば、悔いのない人生を生きつくすことが可能になる ―― 。

一瞬一生

 森田療法の大きな特徴は、患者の過去の来歴を一切問わない点である。通常の精神療法では、生育史や親子関係を重視する。そこに、現在の症状の原因を見いだそうとする。

 しかし、森田療法では過去を問わず、ひたすら現在の生きざま、動きのみを問題にする。なぜなら、人が変えられるのは現在、今の事象であり、過ぎ去った出来事ではないからである。

 今の目の前の一瞬に、一生をかける。森田療法の真骨頂は、ここにある。

 人生を、常に一瞬にかけて生きていく強さをもつと、人生そのものが強靭になる。人生を進む一歩一歩が、いわば道場と化す。人が手にしているのは、過去でも未来でもなく、現在の一瞬のみである。過去と未来に手を加えるのは不可能である。操作できるのは、今の一瞬だけである。

 同様に、まだ来ない将来をあれこれ憂えても、無駄に気力を萎えさせるだけだ。

 重荷があるなら、今の一瞬一瞬に命をかけ、重荷の1つ1つを解きほぐしていけばいい。

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