2013年10月号掲載
「依存症」社会
- 著者
- 出版社
- 発行日2013年8月10日
- 定価858円
- ページ数202ページ
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著者紹介
概要
アルコール依存症やパチンコ依存症等の「依存症」になる人は、「意志の弱いダメな人間」と見られがち。だが精神科医の著者は、依存症は適切な治療と予防が必要な“病”だという。何かをやめられないのは意志ではなく、社会の問題だと指摘。ギャンブルやゲームなど、依存症患者を量産することで成り立つ「依存症に依存する」社会の実態を暴き、警鐘を鳴らす。
要約
人生を壊す依存症の恐怖
精神科医をやっていて、私が最も重大な病気だと思うものに「依存症」がある。
アルコール依存にせよ、ギャンブル依存にせよ、1人の人生を破滅に追い込み、最悪、自殺の末路をたどってしまうこともある怖いものである。
さらに依存症は、その患者数がすさまじい。推計値だが、アルコール依存は約230万人、インターネット依存が270万人、その他、睡眠薬や安定剤が手放せない人、タバコがやめられない人、ゲーム依存、覚醒剤依存、セックス依存など全てあわせると2000万人近いはずだ。
にもかかわらず、欧米に比べて日本では、依存症のリスクに対する認識が非常に遅れている。
どこからが依存症なのか
依存症が厄介なのは、薬物依存はともかくとして、酒であれ、ギャンブルであれ、どこまでが健全で、どこからが依存症か判断が難しいことだ。
連日、酒を浴びるように飲む人は、仕事を休みがちになっても、対人関係でトラブルを起こしても、「自分はアルコール依存症などではない。少し酒を控えればいいだけだ」と思っている。
ネットゲームなどにはまっている人は、どれほどゲーム浸りの生活をしていても、「やめようと思えばすぐにでもやめられる」と思っている。
共通するのは、「自分をコントロールできなくなるようなことはない」という思いだ。そこには、意志の力で引き返せる、自分だけは大丈夫という根拠のない思い込みがひそんでいる。
作家で、ギャンブル依存症治療を積極的に行っている医師でもある帚木蓬生氏は、依存症は進行性の病気だと述べている。つまり、ガンと同様、放っておくと悪化の一途をたどるということだ。
脳の報酬系の異常が依存症を生み出す
これまで依存症は心理的な問題だと思われてきたが、近年、強迫性障害における、ある行為がやめられない状態や、その行為を行っていないと生じるイライラ感、不快感、不安感は、脳の神経伝達物質の異常であるという考え方が強まってきた。
例えば、脳内報酬系と呼ばれる神経系に異常が生じているという専門家もいる。報酬系とは、「喜び」を生み出す神経系で、多くの行動を促進する重要なメカニズムを担っている。