2013年11月号掲載
ゲームのルールを変えろ ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営
著者紹介
概要
2013年に100周年を迎えた老舗の外資系企業、ネスレ日本。同社100年の歴史の中で、史上初の生え抜き日本人CEOに就任した著者が、経営に対する自らの考え方を語った。日本企業が低迷している原因は、高度成長時代の「ニッポン株式会社モデル」からいまだ脱却できていないことにあり、リーダーが先頭に立って「ゲームのルール」を変えることで、道が拓けると説く。
要約
ニッポン株式会社モデルから脱却せよ
ネスレ日本は、2013年で100周年を迎えた老舗の外資系企業である。
外資系ではあるが、日本企業以上に日本的経営を実施している。日本的経営の最大の良さである「人を大事にする」ことを貫き、社員は終身雇用に守られ、離職率は2%にも満たない。
日本的経営は過去の遺物とされている。しかし私は、日本的経営が全ての面で間違っているとは考えていない。問題は、意味や目的や役割を失った負の遺産を引きずっていることだ。
大切なのは、これからのグローバル経済に通用する新しい日本的経営モデルを築くことである。
競争力を失った「ニッポン株式会社モデル」
戦後、日本は焦土と化した。その直後から、先進諸国に「追いつけ、追い越せ」と、復興への道を突き進む。その結果、世界に類を見ない成長を遂げるが、それを支えた要因はいくつかある。
中でも、銀行のメインバンク制によって資金を手当てし、稼いだ利益の株主への還元を抑えるシステムが功を奏した。これにより、設備投資に資金を振り向けることを可能にしたのだ。
加えて、労働者のコストが安かったことも寄与した。また、刻苦勉励という日本人特有の気質によって、労働の質が高かったことも無視できない。
こうしたシステムと相まって、戦後半世紀で人口が5000万人増加したこともあり、日本は世界で戦う競争力を身につけることができた。
この「ニッポン株式会社モデル」が、戦後から高度成長までのモデルとして素晴らしかったことは間違いない。だが、労働力のコスト優位性がなくなり、人口増加もストップした1980年代後半のバブル絶頂期を過ぎると、急激に競争力を失う。
その結果、新興国に追いつかれ、追い越された。
ニッポン株式会社モデルの脆弱性
国家と同様、日本企業の最も深刻な問題は、状況を打破するイノベーションを起こせないことだ。