2013年1月号掲載
なぜ、あの会社は顧客満足が高いのか オーナーシップによる顧客価値の創造
概要
顧客満足を向上させるために、まず従業員満足の向上に努める企業は少なくない。しかし著者たちは、より大切なのは従業員の「オーナーシップ」―― 当事者意識だという。事実、ユニクロなど、業績が良く顧客満足度の高い企業はオーナーシップを促進している。本書では、こうした企業を分析、そこから導き出したオーナーシップおよび顧客満足向上の仕組みを示す。
要約
「オーナーシップ」という鍵
企業経営において、「顧客満足」が重要であることに異論を唱える人は、ほとんどいないだろう。
顧客満足を向上させるために、まず従業員満足の向上から取り組む企業は少なくない。多くの企業がそうするのは、「従業員満足が高まれば、顧客満足が高まる」と考えているからだ。
1990年代初期に、「サービス・プロフィット・チェーン」という概念が登場したが、その骨子は、従業員満足が高まれば顧客満足が高まり、業績も向上するというものである。
この概念が普及するにつれ、「顧客を満足させるには、まず従業員から」という考え方が広がった。
しかし実際には、従業員満足を高めても、顧客満足が一向に高まらない場合もある。
職務環境を整えたり、給与水準を上げたりして従業員満足は高まったが、顧客満足は低い水準のままだと嘆く企業もある。単に従業員満足を高めればいいというわけではないのである。
従業員満足よりオーナーシップ
顧客満足を高めるのに、従業員満足は必要だが十分ではない。もっと大切なのは「オーナーシップ」である。
ここでのオーナーシップとは、「従業員が、勤務する企業をあたかも我が身のように考え、企業やその製品、サービスの成功を自分のことのように喜び、さらなる成功を呼び込むために労をいとわなくなる状態」のことである。
オーナーシップを日本語に訳すのは難しいが、最も近い概念は「当事者意識」だろう。従業員が、勤務する企業の業績や評判を「他人事」とは考えず、自分のこととして、すなわち当事者意識を持って捉えているかということである。
オーナーシップを持つ従業員は、サービスプロセスや職務環境の改善提案を積極的に行うし、自ら先頭に立って提案を具体化させる。
従業員にオーナーシップを持たせることができれば、高いサービス品質が達成され、顧客満足は上昇する。企業内にオーナーシップを持つ従業員がどれだけいるかが鍵になるのである。