2014年1月号掲載
ギリシャ人の真実
著者紹介
概要
“ギリシャ危機”により、偉大な古代の歴史を持つ国のイメージから一転、外国から「悪者」扱いされることになったギリシャ。今も綱渡りの財政運営が続くこの国と、人々の思いや現実を、長年ギリシャに関わってきた著者が綴る。国が借金だらけなのに政府がばらまき政策を続け、五輪で浮かれるうちに危機が到来…。同国の出来事は、決して対岸の火事ではない。
要約
ギリシャに危機がやってきた
2010年以降のギリシャ社会の激変、坂道を転がるような勢いで日々の生活が悪化する状況は、多くのギリシャ人にとり悪夢以外の何物でもない。
ある日突然、国の金庫が空っぽだと国民は知らされた。外国からは「ダメなギリシャ」というレッテルを貼られ、国の威信もなくした。
一体なぜ、こんなことになってしまったのか。
危機は突然やってきた
危機は突然訪れ、生活も社会も突然崩れた。特に2011~12年の2年で、人々の生活が激変した。
最初の頃は「これから先どうなるんだろう」という漠然とした不安だった。不安は大きかったが、まだ実際の生活に影響は出ていなかった。
それがわずか数カ月後には、みるみる給料、年金が減り始め、新しい税金が課せられ、企業は倒産、解雇が増え、13年5月の失業率は27.6%になった。25歳未満の若者に至っては64.9%だ。
子や孫の経済的重荷になっているからと自殺する人、住宅ローンを支払えず家を手放す人、事業に失敗し全財産を手放す人…。ギリシャの人々の生活は、今もますます厳しくなっている。
危機につながったユーロの導入
2001年、ギリシャは、ヨーロッパの国々が共通の通貨ユーロを使う「ユーロ圏」に加盟した。
以前は「ドラクマ」という通貨を遣っていたが、ユーロへの移行後、約341ドラクマが1ユーロになる。つまり、お金の単位が341分の1になった。
私の友人たちは「ユーロになってお金の単位が小さくなったと頭ではわかってるんだけど、ついつい勘違いしてドラクマの時なみにどんどん遣ってしまう」と言っていた。価値がユーロとドラクマでは大きく異なるのに、以前のドラクマ通貨と同じ感覚でユーロを遣ってしまうらしい。
そして、便乗値上げでモノの値段が一気に跳ね上がった。例えば、ミネラルウォーター500mlの値段は、57ドラクマ(約18円)だったのが、なぜかいきなり0.5ユーロ(約50円)に。一事が万事こんな調子で、あれもこれも値上がりした。