2014年4月号掲載
僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか 各国「若者の絶望」の現場を歩く
Original Title :End of the Good Life
- 著者
- 出版社
- 発行日2014年2月10日
- 定価1,870円
- ページ数276ページ
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著者紹介
概要
2007年の米国での金融危機に端を発した経済的混乱から、世界は立ち直りつつある。とは言え、欧米では若者の失業率が極めて高い。各国政府は雇用問題よりも赤字削減を優先し、彼らをさらに悪い境遇に追い込もうとしている。失業、低賃金、借金…。『ウォール・ストリート・ジャーナル』の若手記者が、大卒でも就職できない“若者の絶望”の実態をレポートする。
要約
豊かな生活の終わり
アメリカンドリームが、幻想ではない時代があった。
1981年、ジョゼフとエスフィラという若い夫婦が、人生を賭けて当時のソ連からアメリカへ移住した。英語が話せるわけでもなければ、住む場所が決まっていたわけでもない。ただ、いい暮らしがしたいという思いがあっただけだ。
2人はアメリカに着くと、ニューヨーク米国移住者協会(NYANA)の手を借り、住宅を借りた。
NYANAはまず、エスフィラに英語と簿記の講座を受けさせた。そして、彼女の履歴書を求人のある会社に送付。面接の結果、会計係に採用された。
一方、ジョゼフは、NYANAが紹介した会社で面接を受け、エンジニアの職を手に入れた。給与は年間1万4000ドルだった。
2人は貯金をし、庭やプールまでついた2階建ての家を買った。それからさらに数年もしないうちに、ジョゼフが会社の経営を始め大成功する。
アメリカンドリームを実現したのだ ―― 。
実は、ジョゼフとエスフィラというのは私の両親である。だが現在、若者が経済的成功を収める可能性は減少しつつある。時代の変化を暗示するかのように、NYANAは2008年に閉鎖された。
私の両親が移住した1980年代以来、アメリカでは、税制改革、優先的な支出項目の見直し、労働法の改正など、様々な経済政策が行われてきた。それにより、若者が豊かな生活を手に入れるチャンスは大幅に狭まった。
そんな折、2007年に金融危機が発生した。アメリカは大不況に陥り、豊かな生活の実現はいっそう困難になった。
その結果、1976~2000年に生まれた「Y世代(Generation Y)」といわれる若者は、数え切れないほどの困難に直面することが予想される。