2014年5月号掲載
期待バブル崩壊 かりそめの経済効果が剝落するとき
著者紹介
概要
安倍晋三内閣が「大胆な金融緩和を行う」と宣言した後、円安・株高が加速した。だが、金融緩和措置は実体経済を動かし、日本経済を回復させたのだろうか? 著者の答えは、否。「期待が先行し、そして期待だけで終わってしまった」と断じる。“期待”から、やがて“幻滅”へ。アベノミクスの問題点、そして今の日本経済の実態を、各種データを基に検証する。
要約
経済の好循環は生じていない
2012年秋からの急激な円安によって、自動車産業をはじめとする輸出産業の利益が急増し、株価が高騰した。
これにより、多くの人が「日本経済は回復した」と感じた。株価の大きな変動が、経済全体のムードに大きな影響を与えたのである。
株価など資産価格の重要な特徴は、「期待」に強く影響されることだ。将来株価が上がると多くの人が考えれば、買いが増え、株価が上がる。
期待は、安倍晋三内閣が「大胆な金融緩和を行う」と宣言したことで高まった。
だが、期待が大きく変動したにもかかわらず、実体経済はほとんど影響を受けていない。
公共投資減で、2014年度はマイナス成長
では、2014年度の日本経済はどうなるのか。
13年度における公共投資や住宅投資による経済押し上げ効果が剝落し、14年度の実質経済成長率はマイナスになる可能性が高い。
13年7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は1.1%だったが、公的固定資本形成(公共投資)の寄与度が1.2%であった。
つまり、経済成長は公共投資に支えられたものであったのだ。
実際、公共投資の成長率は、4~6月期から引き続いて30%近い異常な高さであった。仮にこれがなくなれば、経済はマイナス成長に落ち込むような状況だったのである。
ところが、14年度における公共投資は、前年度比マイナスになる。従って、これ以外の条件が13年7~9月期から変わらないとすれば、14年度の実質経済成長率はマイナスになるはずだ。