2014年8月号掲載
仮想通貨革命 ビットコインは始まりにすぎない
著者紹介
概要
2014年2月、仮想通貨ビットコインの両替所であるマウントゴックスが取引を停止し、破綻した。そのニュースで、初めて“仮想通貨”を知った人も多いのではないか? では、仮想通貨とは一体何か。報道では違法サイトでの取引等、否定的なものが多いが、実際はどうなのか。ビットコインを例に、基本的な仕組み、仮想通貨がもたらす経済・社会の変化を見通す。
要約
「ビットコイン」は通貨史上の革命
「ビットコイン」という新しい通貨が、急にニュースに登場するようになった。これは、インターネット上で用いうる「仮想通貨」である。なお、米国では、「暗号通貨」と呼ばれることが多い。
ビットコインは、誰でも簡単に利用できる。
まず、「ウォレット」と呼ばれる財布を、パソコンまたはスマートフォンに作る。ウエブにある「両替所」で円やドルを支払い、ビットコインを入手する。ビットコインを受け入れる店舗(大部分はオンライン)で買い物をして、対価をビットコインで支払う。
ビットコインに関するニュースは、違法サイトでの取引など、ネガティブなものが多かった。
また、ビットコインの両替所マウントゴックスの破綻が、ネガティブな印象を強めた。
こうしたニュースを見て、「得体の知れない偽金もどきがばらまかれ、誰かが利益を得ているのでは?」と疑っている人が多いだろう。
日本のマスメディアは、これをどう評価するかについて態度を決めかねている。「全く斬新なものだが、今後の成り行きが注目される」とか、「規制・監視が必要」などという類いの、腰の引けた扱いが多いように見受けられる。
こうした評価の根底にあるのは、「責任ある主体が発行・管理しない通貨など、広まるはずはない」といった考えだ。
しかし、ビットコインは、きわめて重要な発明なのである。送金コストがきわめて低いため、これまで不可能だった経済活動が可能となる。他方で、決済制度や通貨制度、ひいては国家の存立基盤にまで重大な影響が及びうる。
ビットコインの中心は「取引記録」
これまでの通貨は、中央銀行や国が発行・管理してきたし、電子マネーは特定の企業が発行・管理する。しかし、ビットコインには、発行者も管理者も存在しない。
では、どのように維持しているのか?