2014年8月号掲載

中国の歴史認識はどう作られたのか

Original Title :Never Forget National Humiliation

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著者紹介

概要

1989年の天安門事件の後、中国共産党政権は長くはもたないと見る専門家は多かった。だが、共産党は支持を回復、若者に愛国主義が根付く。日本へは以前より強気に主張するようになった。その背景にあるのが、「歴史的記憶」。過去の出来事自体ではない、中国人による歴史の理解だ。それがどう作られ、利用されてきたかを、中国育ちの在米国際政治学者が論じる。

要約

「戦車男」から愛国主義者へ

 1989年6月5日、北京の天安門広場で戦車の前に立ちはだかった1人の中国人青年 ―― 。

 欧米では、中国と言えばまずその姿を思い浮かべる人が多い。あのシーンは、中国の国民と共産党政権との対立関係を浮き彫りにした。実際、学生たちによる民主化推進運動を見て、国民は政権転覆を望んでいると受け取った人は多かった。

 しかし20年後の今日、世界が最も衝撃を受けているのは、中国の国民(特に若い世代)と共産党の間の新たな関係だ。中国政府は極めて愛国主義的な国民に強く支持されているようである。

 中国の若年層は、なぜ愛国主義的なのか? 天安門事件からこの20年余り、中国ではいったい何が起きていたのだろうか?

 社会の支配的エリート層は、しばしば国家的記念碑を建造し、それをシンボルとして、国民の歩みというストーリーを人々に記憶させようとする。しかし支配層はその際、歴史のどの部分を記憶に留め、どの部分を忘れ去るべきかを取捨選択する。

 国家の祝日や記念日は単なる休日ではない。国家の支配層はそれを利用して、市民たちに同じ国民としての歴史を繰り返し思い起こさせる。

 例えば2009年、世界は中華人民共和国の建国60周年の壮大な祝賀行事を目にした。式典は中国人民解放軍のエリート部隊の行進で始まった。部隊は天安門広場の中央から国旗掲揚台まで、きっかり169歩かけて行進して国旗を掲げた。

 その1歩1歩は、まさに1840年のアヘン戦争開戦からの169年の歩みを表していたのだった。

 何を記憶し、何を忘れるべきか、その取捨選択は、単に機械的な仕分け作業ではない。

 政府が歴史をどう規定するかは、極めて政治的な問題であって、政府の支配の正当性とも密接に関わり、まさに中国の国民的アイデンティティを形作るものでもあるのだ。

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