2014年9月号掲載
奇妙なアメリカ 神と正義のミュージアム
著者紹介
概要
米国では、ミュージアムの人気が高い。その数、1万6000~2万。展示内容も様々だ。本書はこれらの中から、興味深いミュージアムを取り上げる。例えば、聖書の創造の物語が事実だとして進化論を科学的に否定するもの、核兵器開発の歴史を賞賛するもの、凶悪犯罪者の情報を集めたもの…。ミュージアムという空間を通して、様々な表情を持つ米国社会が浮かび上がる。
要約
創造と地球の歴史のミュージアム
アメリカは不思議な国である。経済大国として世界中の富が集まる一方、貧困が深刻な社会問題でもあり、今や貧困大国とも呼ばれている。
どこの社会にもつじつまの合わないことはあるが、アメリカは特に極端だ。様々な表情を持つ多面的な社会であり、なかなか理解が難しい。
このようなアメリカ社会を考えるために、博物館や美術館などのミュージアムに焦点をあてる。
アメリカではミュージアムはとても人気があり、大きな影響力を持つ。大小様々な規模と種類があり、その数は1万6000~2万。訪れる人の数は毎年8億5000万人。これはメジャーリーグなどの主要プロスポーツの観客動員数に、ディズニーランドなどの有名遊園地の入場者数を足した合計(約4億8000万人)をはるかに凌ぐ。
その中から、今日のアメリカを知る上で重要な手がかりとなるものを見ていこう。
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カリフォルニア州サンディエゴ市郊外にある、「創造と地球の歴史のミュージアム」。
ここは、進化論を否定し、聖書にある創造の物語を真実として擁護する不思議なミュージアムだ。
創世神話と創造論
調査によると、アメリカで進化論を信じる成人は40%に過ぎず、ほぼ同数の39%は明白に否定し、21%は「わからない」と答えている。
日本や欧州諸国で、約80%の成人が進化論を真実として受け入れているのと対照的である。
聖書の『創世記』によると、神はこの世を6日間で創った。第1日目は世を光と闇に分け、2日目は水と空を分けた。3日目には海と陸を創り、4日目には昼と夜を分け、5日目には水中の魚と鳥を創る。そして、最後の6日目に陸上動物と人間の男女を創り、アダムとイブと名付けた。