2014年10月号掲載

日本人が知らない世界と日本の見方 本当の国際政治学とは

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著者紹介

概要

国際政治学者・中西輝政氏が京都大学で行い、人気を博した講義「現代国際政治」。その講義録を書籍化。国際政治学がどのように生まれ、発展してきたかを振り返り、矛盾とジレンマに満ちた国際政治の本質に迫る。なぜ共産主義革命が起こったのか、なぜ日本は第2次世界大戦を避けられなかったのか…。わかりやすい語り口で、“世界の見方”を示してくれる。

要約

戦争の仕組み

 本書は、私が京都大学で「現代国際政治」という名称で行った講義をまとめたものである。

 講義では、国際政治の本質的な矛盾と葛藤、ジレンマに満ちた実態を体感できるよう、関連する話題、特に歴史の話題を多く盛り込んで話した。

 まず、国際政治学あるいは国際関係論という学問が、どのように生まれ、発展してきたかを歴史的に振り返って考えたい。

世界史初の国家総力戦だった第1次世界大戦

 国際政治学、国際関係論は欧米など先進国で始まった学問で、きっかけになったのは第1次世界大戦である。これは、本当にひどい戦争だった。

 世界史上初の「国家総力戦」で、最新兵器が数多く投入され、それまでとは戦争の様相が一変した。戦車や飛行機、毒ガスなど、核兵器以外のすべての大量破壊兵器が開発・使用され、それにより生じた人的犠牲は甚大なものだった。

 また、国家総力戦ということのもう1つの意味は、「国家が国民を騙す戦争」ということだ。

 戦意高揚のため、マスコミを利用し国民に虚偽の情報を植えつける。戦争の美談を捏造したり、負けているのに「勝っている」と報じる。いわゆる「大本営発表」だが、これは大戦中のイギリスで派手に行われ、戦後、大きな問題になった。

 結局、大本営発表と軍国主義とは必然的な関係にあるわけではなく、むしろ国家を挙げた総力戦というものがそれを生み出したということである。

戦後賠償がヒトラーを生んだ

 第1次世界大戦のもう1つの特徴は、戦後処理や戦後賠償、特に戦争責任をめぐる論争が悲惨な結果を生み出したことである。

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