2014年12月号掲載

依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実

Original Title :THE FIX

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著者紹介

概要

「依存症」は酒や薬物に限らない。iPhone、スターバックスのフラペチーノ、あるいはゲームアプリ。現代社会に溢れる、魅力的なものに人々が「病みつき」になるメカニズムは、ヘロイン等がもたらすものと同質だという。では、何が人を依存的行動へ駆り立てるのか。かつてアルコール依存症だった著者が、その原因、そして人間の意志の弱さにつけ込むビジネスに迫る。

要約

私たちを「廃人」にする社会

 21世紀のカップケーキ、それは驚くべき代物だ。たっぷりかかった砂糖衣やバタークリーム。それは子どものバースデーケーキに似せたものだ。

 そのレトロな魅力は、糖分や脂肪分のとりすぎといった懸念を押しやってくれる。「お母さんの味!」 ―― 広告はそう謳う。そんな食べ物がジャンクフードのはずがない…そうだろう?

 お次は、iPhone。このスマートフォンの機能は、携帯電話に必要なものをはるかに超えている。だとすれば、アップルがつい先日発売した新製品に買い替える必要などないだろう…それとも?

 そして、バイコディン。米国で最もよく処方されている鎮痛剤だ。2010年に発行された、バイコディンの処方箋は1億3000万枚。

 この薬の本来の目的は、末期癌などがもたらす耐え難い痛みの緩和だ。こうした薬をこれほど大量に飲む米国人は、ひどい痛みにさいなまれているのだろう。いやそれとも、さほど悪くないのに、バイコディンがもたらす、うっとりするような幸福感なしには、すませられなくなったのか?

 カップケーキとスマートフォンと一般的な鎮痛薬。全く無害に見えるこれら3種のありふれた製品は、実はどれも厄介な問題をもたらす可能性がある。というのも、これらは、依存的行動を強めかねない欲望の対象であるからだ ―― 。

21世紀をむしばむ欲望

 21世紀初頭の社会に生じた最も影響力のあるトレンドは、気分を向上させたい時はいつでも、自分に報酬、すなわち「ごほうび」を与えるという習慣がますます強まったことだ。

 あともう1個食べようと、チョコレートに手を伸ばす時、あともう1回だけ、モバイルゲームで遊ぼうとする時、その行動は依存症に陥っている者のそれによく似ている。

 私たちの祖先は、果実をその場で食べ、性的刺激にすぐ反応しないといけなかった。そうしていなければ、私たちは今、この世にいないだろう。

 問題は、もはや身体的に必要とせず、種としての存続にも何の意味もないような報酬に満ちた環境を私たちが築いたことにある。たとえ必要のないものでも、それらは報酬であるため ―― つまり、脳の中で期待感と快楽といった感情を引き起こすため ―― つい手を伸ばさずにはいられない。

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