2015年3月号掲載

イスラム国の正体

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著者紹介

概要

昨今、イラク・シリアで急速に勢力を伸ばす「イスラム国」。広大な支配地を手に入れた彼らは、テロ集団であるにもかかわらず“国家”を名乗り、人質の首切りなど残虐行為を行う一方、巧妙なPR戦術で世界の若者を惹きつけている。彼らは何者なのか? 他の過激派との違いは何か? 目的は? 資金源は? 元・在シリア特命全権大使が、その実態を解き明かす。

要約

「イスラム国」は「国」なのか?

 「イスラム国」という「国家」がその存在を一方的に宣言したのは、2014年6月29日のことだ。

 イスラム国は名称を変えながら、イラクとシリアの反体制過激派の1つとして、両国内で2011年から政府軍を相手に武力闘争を継続し、14年になって一気に支配地域を拡大した。

 そして、14年6月29日の時点でイスラム国が武力制圧していた、シリア北部のアレッポからイラクの首都バグダッド北方のディヤラ県までを「領土」とし、事実上「首都」をシリア東北部の古都ラッカと定め、実際に「行政」までも始めた。

起源はアフガニスタン紛争

 イスラム国の起源は、1990年代半ばのアフガニスタン情勢にまでさかのぼる。

 アフガニスタンは78年に共産主義政権が発足すると、79~89年までソ連による侵攻・駐留があって、米国などの支援を受けた反ソ・反政府ゲリラ活動の巣窟となった。

 そして、89年にソ連が撤退した後、主導権をめぐって多数の軍閥が争う内戦状態となった。

 96年、イスラム過激派のタリバンがアフガニスタンの政権を掌握。だが2001年、タリバン政権は米国を中心とする有志連合軍により倒される。

 この時代、ヨルダン人のアブ・ムサブ・アルザルカウィ(以下ザルカウィ)が結成した武装グループ「タウヒードと聖戦軍団」こそ、今日のイスラム国に直結するルーツといえる。

 ザルカウィは06年、米軍の空爆で死亡。ザルカウィの死後、アブ・オマル・バグダディを指導者として「イラク・イスラム国」と改名された。このアルカーイダ系武装グループが、現在のイスラム国の母体となる。

指導者は「カリフ」

 では、イスラム国は「国家」として、何を主張しているのか。

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