2015年6月号掲載
不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100
Original Title :IRRATIONALITY
- 著者
- 出版社
- 発行日2013年12月9日
- 定価2,200円
- ページ数345ページ
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著者紹介
概要
人は理性的な動物どころか、愚かな判断、行動を繰り返す動物だった!? 例えば、つまらない映画でも、払ったお金が惜しくて最後まで観る人は多い。チケット代ばかりか時間まで失うことになるのに…。本書は、人が陥りがちな、こうした様々な判断ミスや事実誤認を考察した名著。膨大な心理学実験を基に、「誰もがまぬがれない思考の罠」の数々を解き明かす。
要約
思考の罠
「人間はなんという傑作か、理性のなんと崇高なことか」とは、ハムレットの有名な台詞だ。
理性が素晴らしいかどうかはさておき、確実に言えることがある。人は、自分で思うほど理性を働かせていないということだ。
私たちは、自分は理性的な判断をしていると思っている。他人を見て、「あの人はバカなことをしているな」と思うことはよくあるが、自分はそんなに愚かではないと思っている。しかし ――
手近な情報による誤謬
映画『ジョーズ』の主人公は人食いザメだ。この映画の公開後、カリフォルニアの沿岸では海水浴客が大幅に減った。
遊泳中にサメに襲われる確率よりも、ビーチに向かう路上で交通事故に遭う確率の方がはるかに高いのだが、人々はデータではなく、強い印象を受けたことや、最初に頭に浮かんだ事柄で物事を判断するのだ。
頭に最初に浮かんだことで判断するために起こるミスを、「手近な情報による誤謬」と呼ぶ。これは、思考プロセスに必ず入り込むミスである。
例えば、車の購入を考えている人が友達にその話をしたら、友達が自分の車のよさを熱っぽく語ったとする。それに感化され、そのモデルを買うと、トラブルは多く、燃費は悪く、不満だらけ…。
車の雑誌などで情報を集めるのはたいした手間ではないのに、“手近な情報”に惑わされてしまうというわけだ。
ハロー効果とデビル効果
手近な情報による誤謬と関連したミスに、「ハロー(後光)効果」がある。目立った特長があると、それに引きずられて、他のことまで良く見えてしまうというものだ。
男女を問わず、容姿が良ければ、知的で、器用でユーモアのセンスがあると見られがちだ。容姿の良さと、これらの資質には何の関係もないが、何もかも優れていると思われてしまう。
逆に、「デビル(悪魔)効果」と呼ばれるものもある。何か目立った欠点があると、その人全体の評価が下がってしまうのだ。