2015年7月号掲載

「格差拡大」とイスラム教 2030年、世界の1/3はイスラム教徒に

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著者紹介

概要

IS(イスラム国)はじめ、世界各地で凶行を繰り返すイスラム過激派。彼らが欧米文明を憎み、勢力を伸ばした背景には、「富の格差」があるという。こうした視点のもと、サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』、トマ・ピケティ『21世紀の資本』などを引きつつ、イスラムについて考察した。宗教に疎い日本の、イスラム圏への関わり方についても提言する。

要約

紛争の背後に「富の格差」あり

 イラク、シリア、アフリカなど、世界中で紛争が頻発している。一見、平和な地域にも、経済的な格差や軍事・政治の格差、文明間差別が顕著となり、社会的な不安定さは日々増大している。

 現在の社会不安や世界紛争の多くは、富の格差に由来する。拡大するばかりの経済格差、そして一部の人々に富の多くが占有されるという異常な富の偏在に大きな原因があると思われる。

 この富の格差という現象について明らかにしたのが、トマ・ピケティの『21世紀の資本』だ。

 ピケティによれば、1700年から1820年頃までの世界の富(経済財)の産出量の比率は、ほとんど人口分布と同じであった。

 産業革命以前、アジアの世界人口に占める割合は60%強であり、その生産性は65%前後だった。一方、ヨーロッパは人口の割合は20%であり、生産性は30%であった。つまり、かつては経済財の産出量において地域差は少なかった。

 この人口と富の産出の均衡関係が、急激に崩れるのが1820年代である。ここから1913年頃、おそらく第1次世界大戦の勃発まで、ヨーロッパ諸国の富の産出割合は急増する。

 そして、ヨーロッパが第1次大戦以後その繁栄に陰りを見せると、今度は米国が急激に発展した。

“近代文明”は巨大な収奪マシーン!?

 人類全体の富の産出率に占める欧米の割合の急激な増加、これが意味するものとは何か。

 欧米で溢れんばかりの工業製品が生み出されたが、その製品はどこに売られたのか。その押し付け先ともいえる販売先は、インドや中国などのアジア地域であった。さらに、それらの原材料の仕入れ先はアジア、アフリカ、南米など、現在、貧困や社会不安、紛争が絶えない地域である。

 欧米の富の産出における占有率が上昇する時期は、産業革命により西欧諸国がアジアやアフリカに市場を求めて進行し、また原材料の確保を目指して植民地支配を始めた時期と符合する。

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