2015年8月号掲載

「居場所」のない男、「時間」がない女

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著者紹介

概要

仕事以外の人間関係が乏しく、「世界一孤独」ともいわれる日本人男性。家事・育児に追われ、自分の時間が確保しづらい日本人女性。社会学者の著者は、この男性の孤立問題を「関係貧困」、自由時間に乏しい女性の現状を「時間貧困」と命名。なぜこうした問題が生じるのか、そして、男女双方が幸福になるためには何をすべきなのか、わかりやすく解説する。

要約

居場所のない男

 この国には、巨大な時空の歪みが存在している。それは、サラリーマンの夫と妻の間に横たわる、暗くて深い「時空の溝」に由来する。

 いわゆる、夫が稼ぎ、妻が家事育児を引き受けるという性別分業は、夫婦の生活時間と空間を分離してきた。この時空間のずれは、男女の生活観をまったく異なるものにしている。

 日本の既婚女性は家事・育児も含めた総労働時間は男性よりも長く、睡眠時間は短い。とにかく日本の女性には、時間がない。この現状を、私は女性の「時間貧困」と呼ぶ。

 では、男性は女性よりも自由で幸福なのか? 幸福度で見ると男性は女性よりも低く、孤独死も自殺者数も女性の倍である。

 最大の原因は、男性の孤立であろう。日本の男性は仕事以外の人間関係が極度に乏しく、「世界で一番孤独」とされる。私はこの男性の孤立問題を、地域社会や家族など私的な人間関係に乏しいことが特徴であると考え、「関係貧困」と呼ぶ。

 この男女の「貧困問題」について、検討していきたい。

男性は同性に弱音を吐けない

 男性が孤独、という指摘には反論もあるだろう。街では、おじさん同士仲良く居酒屋で飲んでいる。「男の友情」は、小説や映画の一大テーマだ。

 だが、それは社会に上手く適応できている男性同士にのみ成立する関係のように見える。男性は仕事が上手くいっている時に一緒に飲んだり、ゴルフをしたりする相手に対し、失業や病気、家族の介護などに直面した時に相談はできるだろうか。

 平山は、息子介護を担う男性への聞き取り調査を通じ、相談相手として同性の友人は「頼りにならない」「話す気にならない」一方で、異性の友人が相談相手として頼りになる点を明らかにした。

 これには、同性の友人に対しては強がって言えない悩みも、異性の友人には助けを求められる、具体的な介護の方法について役立つ知識をもらえる等の理由があげられている。

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