2015年9月号掲載

里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く

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著者紹介

概要

経済成長を求め、自然を搾取してきた資本主義は、地球環境を限界まで追い込みつつある。どうすれば、現状を打破できるのか。ヒントは「里海」にあり。これは、「人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム」を意味し、汚染された瀬戸内海の再生で注目されている概念だ。人間以外の命もつなぎ直す「共生の原理」が、経済も暮らしも再生させる!

要約

海からの地域再生

 1970年代、瀬戸内海は汚くて臭い海、「死の海」とまでいわれた。海水浴など思いもよらない。海に流れ込むコンビナートの工場排水、沿岸の都市から流れ込む生活雑排水…。海は、悲鳴をあげていた。

 ところが、その海が「里海」によってよみがえったのである ―― 。

*  *  *

 「カキ筏」を、知っているだろうか。

 広島の世界遺産「宮島」に行った人なら、見たことがあるのではないだろうか。嚴島神社の大鳥居を目指して進むフェリーの左右に、竹を組んだ筏がいくつも見える。それが「カキを養殖する筏」、カキ筏だ。筏の下の海中に、大量のカキがぶらさがっている。

 この「養殖」は人間が一切エサをやらない。では、何を食べているのか。海中のプランクトンだ。

 そのプランクトンは、水中の窒素やリンなどの富栄養化物質を取り込んでいる。窒素やリンは、海に流れ込む川から補給される。山の木が落とした葉などが、その大もとだ。

 では、カキは昔から「沖合にぶらさがっていた」のか? もちろん、そうではない。

 自然のカキは、沿岸の岩場などに付着して育つ。戦後になるまで、カキの育つ場所は瀬戸内海沿岸にいくらでもあり、主に干潟で盛んに養殖された。

 それが戦後、そうはいかなくなった。自然の海岸が、どんどんなくなっていったのだ。

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