2015年9月号掲載
里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年7月10日
- 定価880円
- ページ数226ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
経済成長を求め、自然を搾取してきた資本主義は、地球環境を限界まで追い込みつつある。どうすれば、現状を打破できるのか。ヒントは「里海」にあり。これは、「人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム」を意味し、汚染された瀬戸内海の再生で注目されている概念だ。人間以外の命もつなぎ直す「共生の原理」が、経済も暮らしも再生させる!
要約
海からの地域再生
1970年代、瀬戸内海は汚くて臭い海、「死の海」とまでいわれた。海水浴など思いもよらない。海に流れ込むコンビナートの工場排水、沿岸の都市から流れ込む生活雑排水…。海は、悲鳴をあげていた。
ところが、その海が「里海」によってよみがえったのである ―― 。
* * *
「カキ筏」を、知っているだろうか。
広島の世界遺産「宮島」に行った人なら、見たことがあるのではないだろうか。嚴島神社の大鳥居を目指して進むフェリーの左右に、竹を組んだ筏がいくつも見える。それが「カキを養殖する筏」、カキ筏だ。筏の下の海中に、大量のカキがぶらさがっている。
この「養殖」は人間が一切エサをやらない。では、何を食べているのか。海中のプランクトンだ。
そのプランクトンは、水中の窒素やリンなどの富栄養化物質を取り込んでいる。窒素やリンは、海に流れ込む川から補給される。山の木が落とした葉などが、その大もとだ。
では、カキは昔から「沖合にぶらさがっていた」のか? もちろん、そうではない。
日本最大の内海、瀬戸内海。この静かな海で「カキ養殖」は始まった。だが、最初からカキ筏だったわけではない。その必要がなかったからだ。
自然のカキは、沿岸の岩場などに付着して育つ。戦後になるまで、カキの育つ場所は瀬戸内海沿岸にいくらでもあり、主に干潟で盛んに養殖された。
それが戦後、そうはいかなくなった。自然の海岸が、どんどんなくなっていったのだ。