2015年9月号掲載
ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用
Original Title :THE ALLIANCE
著者紹介
概要
「アライアンス」とは、シリコンバレーで導入されている新たな雇用形態のこと。会社と個人が、信頼に基づく提携関係を結ぶことで、事業の変革と個人の成長が達成でき、退職後も信頼関係が続くというものだ。終身雇用が崩れつつある今知っておきたい、人と企業を信頼で結ぶ新しい雇用モデルについて、世界最大クラスのSNS「リンクトイン」創業者らが解説する。
要約
新しい雇用のかたち
一昔前、米国の雇用モデルは「終身雇用」だった。それは、当時の安定した時代に合っていた。
だが、世の中は変わった。株主資本主義の台頭により、会社は株価を上げるための短期的な財務目標の達成を優先するようになった。
もはや終身雇用という伝統的な雇用モデルは、硬直的すぎる。多くの企業は組織の柔軟性を高めるため、雇用関係を取引関係に矮小化した。社員も仕事内容も、短期間で取り換え可能になった。
企業は「我が社にとって社員こそ最も価値ある資産です」と力説するが、株主が支出削減を要求すると、「最も価値ある資産」は、あっという間に取り換え可能な資産に変身する。
随意雇用(契約の両当事者とも、一方的に契約を破棄できる雇用契約)の時代になると、働く人は自らを「フリーエージェント」だと考えよう、と吹聴されるようになった。自分を高めるチャンスを常に追い求め、より良い仕事に誘われたらいつでも転職するのがフリーエージェントだ。企業への忠誠心には滅多にお目にかかれない。
どれほど企業が安定した時代を懐かしがり、社員が終身雇用を切望しようとも、もう引き返せないところまで世界は変わってしまった。
とはいえ、今までのようなやり方をこの先続けていくこともまたできない。というのも、自分の勤務先の「経営陣と組織に高い信頼を置く」社員の比率は、史上最低に近いからだ。
忠誠心を得られない企業は、長期的思考ができない企業である。長期的思考ができない企業は、将来に向けた投資のできない企業である。そして、将来のチャンスと技術に投資しない企業は、死に向かっている企業なのだ。
アライアンス
終身雇用の時代にも戻れず、現状維持もできないならば、今こそ雇用主と社員の関係を見直す時ではないだろうか。
雇用を「アライアンス」だと考えてみよう。自立したプレーヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。
アライアンスの関係は、雇用主と社員が「どのような価値を相手にもたらすか」に基づいてつくられる。