2016年2月号掲載
ほめると子どもはダメになる
著者紹介
概要
叱られるとムカつく。興味のないことはやりたくない…。傷つきやすく、鍛えることが難しい若者が増えている。それは、欧米流の「ほめて育てる」子育てを、表面だけ真似たことが大きい。20年ほど前から広まった新しい教育論が、日本社会では様々な歪みをもたらすこと、それを正すために親がなすべきことを述べる。
要約
「ほめて育てる」教育の弊害
「日本の子どもや若者は自己肯定感が低いから、もっとほめて自信をつけさせないといけない」
そんな声が20年ほど前から教育界にも親の間にも広まり、「ほめて育てる」が大流行となった。
果たして、若い世代は逞しくなっただろうか。むしろ、傷つきやすく、キレやすい若者が増えたのではないか。実際、学生たちの相手をしていると、無理しない若者、頑張れない若者が目立つ。企業の管理職や経営者の人たちと話しても、最近の若手は扱いが難しいと誰もが口にする。
2012年に20~50代の会社員700人に行った私たちの調査でも、そうした傾向が顕著にみられた。
調査データでは「年長者からアドバイスされて、うっとうしいと思う」者が2割を超え、20代では3割近くに及ぶ。つまり、若年層に、特に年長者のアドバイスに反発する心理が潜んでいる。
こんなことでは若手を育てるなど無理だ、といった嘆きの声も耳にする。傷つきやすい若者の急増で、誰もが部下の指導に悩む時代になった。
叱られることに抵抗がある
「ほめて育てる」は、深刻な弊害をもたらす。第1の弊害は、ストレス耐性が非常に低いことだ。
叱られる経験の乏しい学生たちと話すと、正当な注意であっても感情的に反発する傾向がある。
「授業中、やる気のない態度を取っていたら、先生から注意されてムカついた」
そんな発言をある学生がすると、自分もそういうことがあるという者が続く。注意された自分が悪かったという実感はほとんどないのだ。
叱られ慣れていないため、「叱る―叱られる」という建設的な関わりを理解していない。そのため、「叱られる=自分に気づきを与えてくれる」といった発想がなく、反発することになる。