2016年9月号掲載
創業メンタリティ 危機を救い、さらに企業を強くする3つの戦略
Original Title :THE FOUNDER'S MENTALITY:How to overcome the predictable crises of growth
著者紹介
概要
企業が持続的成長を遂げるのは難しい。順調に拡大していても、ある時期から様々な危機に直面する。著者によれば、その原因の多くは、野心的な「創業目線」の喪失に由来するという。自らを革新勢力と考え、官僚主義を排する態度と行動 ―― 創業目線こそが成功の秘訣だとし、持続的な成長につなげる戦略を示す。
要約
創業目線
成長すると企業は複雑になるが、複雑性は静かに成長を蝕む ―― 。
このパラドックスこそが、最低限の利益成長をここ10年続けている企業が10社に1社ほどしかないこと、85%の経営幹部が、企業が成長できない原因に、コントロール不可能な外的要因ではなく社内の問題を挙げている理由である。
成長を維持するカギは、組織内部に隠れており、あらかじめ知ることが可能なのだ。
創業目線(メンタリティ)とは何か
持続的成長を成し遂げる会社は、違いもあるが、野心的で大胆な創業者に共通に見られる態度と行動を持ち合わせている。
収益の伴った成長を遂げた企業は、自らを革新勢力だと考える。満たされていない顧客のために業界基準や業界そのものに戦いを挑み、全く新しい産業を打ち立てようとする。
このような会社には、全社員が自分事と思えるはっきりした使命感が芽生える。組織的には、複雑性や官僚主義など、戦略を実行する障害となるものがすべて排除される。ビジネスの細部にまでこだわり、顧客と接する現場の社員を称える。
こうした態度と行動が組み合わさってできる意識の枠組みこそが、成功の秘訣である。本書ではこれを「創業目線」と呼ぶ。
「ザ・リミテッド」の場合
偉大な創業者には、興味深い始まりの物語があるものだ。オハイオ州で生まれ育ったレスリー・ウェクスナーの物語は、25歳にして両親よりも店を成功させられると考えた1963年にさかのぼる。
父母はともに百貨店で長時間働いていた。だが稼ぎは少なかった。窮状を脱するため、小さな店を開業するが、状況はあまり改善しなかった。
彼は疑問に思う。両親は一生懸命働いているのに、どうして暮らしがよくならないのだろう?
その答えは、店の手伝いをしている時に明らかになる。請求書の束に目を通したウェクスナーは、店に置かれているのが、ワンピースやコートといった値段は高いが利益の比較的少ない商品ばかりであることに気づいた。店がつぶれずに済んでいるのは、シャツやスカートのように、値段は平均的だが利益率の高い商品のおかげだった。