2016年11月号掲載
人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長
- 著者
- 出版社
- 発行日2016年8月25日
- 定価836円
- ページ数198ページ
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著者紹介
概要
少子化に伴う人口減少で、日本経済の衰退は避けられない ―― 。こうした悲観論を一蹴する。先進国の経済成長のカギは、人の数ではなく、イノベーション。世界有数の長寿国であるわが国には、多くのチャンスがあると指摘。人口を経済学の視点から捉え直し、財政危機や人工知能の発達等々、日本経済の本当の課題に斬り込む。
要約
日本の人口
「人口問題」、これは21世紀の日本にとって最大の問題である。
2012年1月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、日本の人口は2110年に4286万人になる。
2015年の人口は1億2711万人だから、これから100年でわが国の人口は約3分の1にまで減少する。これほど大きな人口の変化は、日本の経済・社会に大きな影響を与えるに違いない。
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人口調査の歴史を見ると、奈良時代の中央政府は、日本の全人口を把握していた。わが国では7世紀末、持統天皇の時から全国の戸籍が6年ごとにつくられ、氏名、年齢、性別、家族関係まで詳しく記した文書が、国司(地方官)から中央の中務省と民部省へ送られていた。
だが、9世紀になると、戸籍は12年ごと、数十年に1度となり、やがて10世紀に途絶した。その後、全人口調査は明治になるまでなされなかった。
日本の人口については、歴史人口学の専門家による優れた解説書も存在する。鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』によると、江戸時代に入って最初の100年、17世紀には人口が大きく増えたが、18世紀に入り、8代将軍徳川吉宗の享保時代から幕末まで人口は停滞した。
そして、明治になってからは、再び爆発的と言えるほどのハイペースで人口が増加した。
しかし、1920年代に入ると、都市部から少子化が始まる。終戦直後(1947~49年)は一時的に人口爆発が起き、いわゆる「団塊の世代」が生まれたが、人口の増加率は1975年以降、急速に低下し、2004年の1億2779万人をピークに、日本はついに人口減少時代に入った。
過去にも人口の微減はあったが、100年で3分の1というように人口が激減した時代はない。我々は、これから100年、文字通り歴史上、人類が経験したことのない人口減少の時代に突入する。