2017年1月号掲載
MUJI式 世界で愛されるマーケティング
著者紹介
概要
無印良品(MUJI)の人気と知名度は高い。現在、約7000品目の商品を販売。日本ばかりか欧米でも人気は定着し、最近はインドや中東にも進出している。なぜMUJIは “世界で愛される”のか。「一番普通の形を目指す」「ターゲットを絞らず、最大公約数を探す」等々、MUJIならではの取り組みについて、マーケティングの知見を交え説く。
要約
MUJI式のマーケティングとは
無印良品(MUJI)の商品開発者がいつも考えていることがある。「この商品の色や飾りをそぎ落としたら、どうなるか」「この商品を少し変更したら、もっと使い勝手が良くなりそう」…。
道具や衣料品は、地域の文化などを背景に出来上がっている。色、形などは色々だ。そういう装飾を省き、機能だけを残したらどうなるか。MUJIの商品開発者はそういうことを考えている。
イノベーションとは、ゼロから何かを生み出すわけではなく、もともとあるものの「新しい組み合わせ」によって生まれるといわれる。その意味では、MUJIのやり方はイノベーションそのものである。そんなMUJIの商品開発やコンセプトについて、詳しくみていこう ―― 。
欧米グローバル・ブランドとの決定的な違い
世界におけるMUJIの人気と知名度は、日本人が思っている以上に高い。MUJIの店舗数は、いまや日本国内と海外が並びつつある。
2016年2月時点で、国内は直営店312店舗、商品供給店102店舗の合計414店舗。一方、海外は直営店と商品供給店の合計344店舗。特に中国の伸びが大きいが、欧米でも人気は定着し、最近ではインド、中東などにも進出している。
欧米のグローバル・ブランドの成功と比べた時、MUJIの世界展開の成功は、画期的な意味を持つ。
グローバル・ブランドとは、世界中で同一の名前、ロゴ、スローガンを用いて製品を販売するブランドのことをいう。アップルやスターバックスなどは、その点で優れたグローバル・ブランドだ。
MUJIも、ある一定のブランドの世界観を持ってグローバルに展開をしている点では同じだといえる。ただし、MUJIはアップルやスターバックスと決定的に違うところがある。圧倒的に品目数が多いのだ。その数、約7000品目。衣服、生活雑貨、食品など多岐にわたる。
そのため、「カレーはMUJIが一番おいしい」「文房具はMUJIのものが一番使いやすい」などと、人によってイメージする商品は色々なのだ。
MUJIは幅広いカテゴリーの商品を取り揃えているにもかかわらず、一定のブランドイメージをグローバルに保っている。なぜ、それが可能なのか。MUJIのコンセプトに基づいた商品開発で、その共通のイメージを作りあげているからだ。
そのイメージをざっくり言えば「シンプル」「自然」だ。MUJIは「シンプルで自然な生活用品のブランド」として、世界の人々に幅広い商品を提供し、その思想を受け入れてもらっている。