2017年2月号掲載

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋

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著者紹介

概要

1990年代に「失われた20年」に突入後、経済が低迷する日本。教育水準、労働者の質は高いにもかかわらず、生産性は先進国最下位(世界第27位)だ。なぜなのか。各種データをもとに長期低迷の「原因」を特定し、日本復活の「秘策」を示す。元ゴールドマン・サックス金融調査室長の著者ゆえ、数字に基づく論は説得力がある。

要約

日本は潜在能力を発揮できていない

 日本は、GDP(国内総生産)ランキングで世界第3位の経済大国である。製造業生産額でも第3位、輸出額では第4位。他にも様々な世界ランキングで、日本は上位に位置している。

 これだけを見れば、日本は資源の少ない小さな島国でありながら、高い潜在能力を発揮していると捉えられてもおかしくはない。

 その原動力を説明しようと、マスコミは技術大国、勤勉な労働者、社会秩序、職人気質などを取り上げてきた。しかし、「これだ!」という決定的な解説には、いまだに出会ったことがない。

先進国GDPランキングは人口要因で説明できる

 そもそも、GDPランキングと技術力や職人魂云々などの要素はイコールではない。

 世界のGDPランキングで第何位という評価は言わずもがな、経済の「絶対量」である。それは簡単に言えば、先進国の中では「人口」だ。

 GDPは「人口×生産性」であり、先進国におけるGDPランキングは、ほぼ完全に人口ランキングと対応している。一流の先進国同士では、生産性に差はあるものの、それは人口の差を上回るほどではないため、人口こそがランキングの高低に最も影響を及ぼすのだ。

 その事実から、日本が最近まで世界第2位の経済大国だった理由を考えれば、答えは明らかだ。当時の先進国の中で、日本より人口の多い国はアメリカだけ。欧州には1億人国家は1つもない。

 もうおわかりだろう。日本が世界第2位になったのは、人口が他の先進国と比較して相対的に多かったからだ。「技術力が他の先進国を上回ったから」「高い潜在能力を発揮できたから」というのは、根拠のない不適切な説明と言わざるをえない。

潜在能力の発揮度合いは「1人あたり」で見る

 生産性は、日本人1人1人の潜在能力が発揮されているかどうかを見る尺度になる。

 実は、日本人の生産性(1人あたりGDP)は世界で第27位と低い。

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