2017年2月号掲載

「ココロ」の経済学 行動経済学から読み解く人間のふしぎ

「ココロ」の経済学 行動経済学から読み解く人間のふしぎ ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

経済学では、人は「合理的な存在」とされる。だが、実際はそうではない。健康に良くないとわかっていてもタバコやお酒が止められない、そういう“ココロ”の弱さを誰もが持っている。本書は、こうした感情的な側面を重視する「行動経済学」の視点から、人の判断がどんなメカニズムで生み出されるのか、解き明かしていく。

要約

経済学の中のココロ

 伝統的な経済学が、人間のココロをどうモデル化してきたかご存じだろうか。

 経済学では、合理的な「ホモエコノミカス(経済人)」という人間像を仮定する。冷徹無比で計算高い。お金ばかり重視する。自分の利益を優先する。こうした人間像である。

 しかし実際には、人間は、経済学が考えるように合理的ではない。

最後通牒ゲーム

 ホモエコノミカスについて見てゆくにあたり、「社会的ジレンマ」を取り上げよう。社会的ジレンマとは、個人の選択と社会全体の利益が一致せず、そこに葛藤や乖離が生じることをいう。

 経済学で有名な社会的ジレンマの1つに、「最後通牒ゲーム」がある。このゲームでは、相手が誰かわからないように、2人を1組にして、片方の人間にこう言う。

 「あなた方2人に1万円を差し上げます。ただし、この1万円をどう分けるかは、あなたが決めてくれて結構です。しかし、相手には拒否権が与えられていて、あなたの申し出る分配額に不満ならば、相手は受け取りを拒否できます。その時は、1万円の全額が没収されてしまいます」

 ホモエコノミカスならこう考える。合理的に考えれば、相手は1円でももらえれば、何ももらえないよりはましなわけだから、受諾するだろう。これが、ホモエコノミカスの出す合理的な答えだ。

 あなたの答えも同じだろうか?

行動主義の誕生

 合理性とは、人間の好み(選好)に関して、最低限成り立つと考えられる約束事である。この約束事に矛盾があってはいけない。

 行動主義とは本来、心理学の言葉だ。人間のココロは外部から見えないのだから、ココロをわからないものとして、行動のみを考察の対象とする。