2017年2月号掲載
「ココロ」の経済学 行動経済学から読み解く人間のふしぎ
- 著者
- 出版社
- 発行日2016年12月10日
- 定価880円
- ページ数205ページ
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著者紹介
概要
経済学では、人は「合理的な存在」とされる。だが、実際はそうではない。健康に良くないとわかっていてもタバコやお酒が止められない、そういう“ココロ”の弱さを誰もが持っている。本書は、こうした感情的な側面を重視する「行動経済学」の視点から、人の判断がどんなメカニズムで生み出されるのか、解き明かしていく。
要約
経済学の中のココロ
伝統的な経済学が、人間のココロをどうモデル化してきたかご存じだろうか。
経済学では、合理的な「ホモエコノミカス(経済人)」という人間像を仮定する。冷徹無比で計算高い。お金ばかり重視する。自分の利益を優先する。こうした人間像である。
しかし実際には、人間は、経済学が考えるように合理的ではない。
最後通牒ゲーム
ホモエコノミカスについて見てゆくにあたり、「社会的ジレンマ」を取り上げよう。社会的ジレンマとは、個人の選択と社会全体の利益が一致せず、そこに葛藤や乖離が生じることをいう。
経済学で有名な社会的ジレンマの1つに、「最後通牒ゲーム」がある。このゲームでは、相手が誰かわからないように、2人を1組にして、片方の人間にこう言う。
「あなた方2人に1万円を差し上げます。ただし、この1万円をどう分けるかは、あなたが決めてくれて結構です。しかし、相手には拒否権が与えられていて、あなたの申し出る分配額に不満ならば、相手は受け取りを拒否できます。その時は、1万円の全額が没収されてしまいます」
ホモエコノミカスならこう考える。合理的に考えれば、相手は1円でももらえれば、何ももらえないよりはましなわけだから、受諾するだろう。これが、ホモエコノミカスの出す合理的な答えだ。
あなたの答えも同じだろうか?
行動主義の誕生
経済学のホモエコノミカス像では、重要な仮定が2つある。「合理性」と「行動主義」だ。
合理性とは、人間の好み(選好)に関して、最低限成り立つと考えられる約束事である。この約束事に矛盾があってはいけない。
行動主義とは本来、心理学の言葉だ。人間のココロは外部から見えないのだから、ココロをわからないものとして、行動のみを考察の対象とする。