2017年3月号掲載
ビジネス現場で役立つ 経済を見る眼
著者紹介
概要
経営学者の伊丹敬之氏による、実践的な経済入門書である。なぜ景気は変動するのか、何が経済成長を可能にするのか…。身近な経済現象を理解するために、どんな視点から現実を眺め、考えればよいかを説く。経済はカネの論理が中心になるが、人間の行動や動機を考えることもまた大切と、人間臭い「経済を見る眼」が示される。
要約
日本経済が成長しない理由とは
なぜ景気は変動するのか、なぜ経済格差は生まれるのか、なぜバブルが繰り返されるのか…。
こうした経済現象を適切に理解し、考える上でもっておきたいもの。それは、「経済を見る眼」である。
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経済を見る眼について述べる前に、まず、日本のマクロ経済がどう動いてきたか、見てみよう。
少し長い歴史的射程で見ると、日本経済はこの20年の間、ほとんど成長していない。
その「成長しななさ」の程度は、国際比較をすると衝撃的ですらある。日米のこの20年間(1996~2015年)のGDP(国内総生産)の動きを見ると、2015年のアメリカの名目GDP(毎年のGDPの計算値)は20年前に比べて2.2倍になったが、日本のそれは3%ほど減少している。
実質GDP(物価調整済みのGDP値)で比べても、アメリカは20年前と比べて55%増しだが、日本はわずか12%増えただけである。20年間で12%だから、年率の成長率にすると1%にもならない。明らかに、日本経済は成長していない。
日本のマクロ経済はどう動いてきたか
日本の名目GDPを、民間消費、民間投資、政府支出、輸出、輸入に分けて見ると、民間消費と政府支出が20年間安定しているが、民間投資、輸出、輸入がかなり変動してきたことがわかる。
特に民間投資は、1996年の104兆円から2015年の86兆円まで、18兆円も減っている(17%減)。
逆に、輸出は51兆円から87兆円まで、36兆円増えた(71%増)。
輸入の方も、東日本大震災後の電力危機の影響で化石燃料の輸入が増え、輸入全体は2011年から大きく増加。その結果、2015年には91兆円となり、1996年と比べると41兆円も増加した。