2017年12月号掲載
仮想通貨革命で働き方が変わる 「働き方改革」よりも大切なこと
著者紹介
概要
今、安倍政権が賃金引き上げなどを目標に掲げ、「働き方改革」を進めている。だが、著者によれば、企業に雇われることを前提とした改革には限界がある。重要なのは、多様な働き方ができる社会をつくることだ。本書では、組織に依存せずに働く「フリーランサー」や、技術の進展が働き方にもたらす影響について詳述する。
要約
フリーランサーという働き方
日本政府は2017年3月、「働き方改革」に関する実行計画をまとめた。
この計画は、人々が企業に雇われて働くことを前提としている。日本の場合、多くの人が組織の中で働いているので、その枠内での改革が大きな課題になるのはやむを得ない。しかし、こうした枠をはめての改革には、限界がある。
他方で、情報技術(IT)の進展により様々な形態の働き方が可能になっている。だからそれを最大限に活用し、新しい働き方を探ることが重要だ。
新しい情報技術が働き方を大きく変える
特に重要なのは、組織に雇われるのではない新しい働き方 ―― 「フリーランシング」を求めることである。これは、かつてダニエル・ピンクが『フリーエージェント社会の到来』(2002年)の中で指摘したことだ。
当時は、フリーランサーが十分な収入を得るための条件が整っていなかった。しかし今では、その条件が急速に整備されつつある。インターネットを介して、個人が組織と対等の立場で仕事をすることが可能になってきている。また、仮想通貨を利用すれば、個人事業での最大の難所であった送金、課金の問題を解決できる。
このような変化によって、主体性を持って働くフリーランサーの世界が実現する。
クラウドソーシングとシェアリングエコノミー
ITの活用は、働き方に大きな影響を与える。このIT活用による働き方の改革として最近登場したものに、次の2つがある。
①クラウドソーシング
これは、それまで組織内で行っていた仕事の一部を切り離してアウトソースするものだ。それを引き受ける専門家との間をスマートフォン上のアプリによってつなぐ。これにより、従来のような長期の固定契約ではなく、短期のスポット契約で労働を提供することが可能になった。
日本では2010年頃からサービスの提供が始まり、急速に成長している。『中小企業白書』によると、クラウドソーシングサイトの会員数は2009年には5.9万人だったが、2013年には91.6万人になっている。
②シェアリングエコノミー
これは、個人が所有している資産や耐久消費財(部屋や自動車など)、あるいは労働そのものを、需要者に一時的に使用させるものだ。供給者と需要者をスマートフォン上のアプリで仲介する。
例えば、自動車に相乗り(シェア)する「ライドシェアリング」。この分野ではUberが有名だ。Uberの登場により、アメリカではいくつかの州で白タクが可能になった。こうなると、タクシーをフリーランシングで行うことが可能になる。