2023年6月号掲載
バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓
Original Title :BOOM AND BUST (2020年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年3月24日
- 定価3,850円
- ページ数393ページ
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著者紹介
概要
金融史・経済史の研究者が、なぜバブルが生じ、弾けるのかを分析した書である。「市場性」「通貨と信用」「投機」。この3要素を軸に、急騰と反落のメカニズムを解明し、普遍的な法則を導き出す。著者によると、ITバブルやサブプライム・バブルなど、昨今はバブルの頻度が増している。そうした中、将来に備える上で示唆に富む1冊だ。
要約
バブル・トライアングル
「バブル」とは何か?
マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済史とバブルを研究したチャールズ・キンドルバーガーは、バブルを「後に崩落する、大幅な価格上昇の動き」と定義している。例えば、株などの資産の価格がある期間に大幅に上昇し、その後、大幅に反落することをバブルと呼ぶ。
この定義から1ついえるのは、100%の確信をもってバブルと認定できるのは、バブルが弾けた後だけだ、ということだ。だが、だからといって、バブルはまったく予測できないわけではない。
バブルの3要素
金融バブルは、火事に喩えることができる。火事の発生過程は、「酸素」「燃料」「熱」という3要素を使ったトライアングルで説明できる。これらの3要素が十分に揃うと、わずかな火花だけで火事が起きる。そして、3要素のどれか1つを取り除けば火事は制圧できる。
バブルについても、これに似た構造を使える。その概念図が「バブル・トライアングル」だ。
第1の要素 ―― 「市場性」
バブル・トライアングルの一辺、ブームを呼び起こす「酸素」に当たるのが「市場性」、つまり、ある資産が自由に売買できることである。
市場性の1つの側面が「分割可能性」だ。資産の一部を購入できるのであれば、その資産の市場性は高まる。例えば上場企業は、株式というごく一部を売買できるので、住宅よりも市場性が高い。
市場性のもう1つの側面が、「買い手や売り手の見つけやすさ」である。バブル期の特徴として、資産市場の参加者が増え、潜在的な売り手と買い手の数が膨らむ点が挙げられる。