2018年2月号掲載
あなたはアベノミクスで幸せになれるか?
著者紹介
概要
5年を経過した「アベノミクス」。だが、“異次元の緩和”にもかかわらず、デフレを脱却できず、設備投資は低調だ。その最大の理由は、人口減少・高齢化による経済規模の縮小だという。このまま経済構造の改革が遅れ、金融政策に依存した状況が続けば、予期せぬ物価上昇が起こり、国民がツケを払う羽目になると警鐘を鳴らす。
要約
金融緩和はなぜ機能しないのか
2012年12月の総選挙で政権を奪還した安倍晋三首相は、デフレ克服のため、「三本の矢」を武器にすると宣言した。すなわち、大胆な金融政策、機動的な財政策、民間投資を喚起する成長戦略だ。後に、「アベノミクス」と呼ばれる政策である。
その先鋒を任された日銀は、「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」と宣言し、量的・質的緩和を開始した。
別名、「異次元の緩和」とも呼ばれるこの手法は、物価目標を達成するまで、日銀がマネタリーベースを供給し、資産を膨らませることを約束したものだ。
黒田東彦総裁は、物価目標の実現について「2年程度をメド」とすると言明した。しかし、いまだにこの目標は達成されていない。
一方、日銀の資産規模は拡大を続け、今や名目GDPに迫る勢いだ。2008年のリーマンショック後、米国は量的緩和を採用したが、その資産規模の対GDP比は最大で25%だ。日銀の量的・質的緩和の大きさは、掛け値なしに「異次元」といえる。
問題は、そうした強烈な金融緩和にもかかわらず、なぜ2%の物価目標を達成できないのか、そして、アベノミクスには将来的に副作用が生じるリスクはないのか、この2点に他ならない。
仮にアベノミクスが間違った処方箋だとすれば、早晩、その歪みが国民生活に及ぶはずだ ―― 。
物価が上がらない最大の理由は、人口減少と高齢化
異次元の緩和を行っているのに、なぜ物価上昇率を2%へ近づけられないのか。その最大の理由は、「人口減少」と「高齢化」と考えられる。
今後50年間、総人口は年率0.7%減少し、2057年には1億人を割り込む。特に15~64歳の生産人口に関しては、年率1.1%減る見込みだ。
一方、2015年に3387万人だった65歳以上の人口は、2043年にはピークに達し3935万人に。2065年は3381万人で、現在とほぼ同水準だ。
その結果、総人口に占める生産人口の比率は、2015年の60.8%から、50年後には51.4%へ低下するだろう。