2018年3月号掲載

イスラーム主義 もう一つの近代を構想する

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著者紹介

概要

イスラームの教えに基づく社会、国家を目指す「イスラーム主義」。19世紀末頃に生まれたこのイデオロギーが、今、中東を広く覆いつつある。実際、イスラームを政治に反映させようという声が中東の政治を変えている。その背景にあるものとは?政治と宗教の関係はどう変わっていくのか? 歴史を繙きながら考察する。

要約

「イスラーム主義」とは何か

 「イスラーム主義(Islamism)」とは何か。

 これは、文字通り、宗教としての「イスラーム(Islam)」に「主義(ism)」が接続された用語である。すなわち、イデオロギーを指す。

 本書では、イスラーム主義を「宗教としてのイスラームへの信仰を思想的基盤とし、公的領域におけるイスラーム的価値の実現を求める政治的なイデオロギー」と定義する。平たく言えば、イスラームに依拠した社会変革や国家建設を目指すイデオロギーということになる。

 このイスラーム主義を理解することは、混迷の色を深める中東の将来を見通す上で不可欠である。

 歴史を遡って見ると、イスラーム主義の歴史は浅い。その起源は、中東のオスマン帝国が衰退し崩壊した19世紀末~20世紀初頭に求められる。

 一方、イスラームが誕生したのは7世紀のこと。この頃には、預言者ムハンマドが率いる単一の共同体(ウンマ)が実現されていた。

 その後、カリフ(預言者の後継者)がムスリムたちを束ねた正統カリフ時代(632~661年)を経て、共同体は分裂し、様々な王朝が併存した。ウマイヤ朝、アッバース朝、ファーティマ朝…。オスマン帝国(1299~1922年)は、このイスラームの王朝史の重要な一部を構成する国家であった。

 植民地支配下の中東諸国では、社会と国家の世俗化が進められた。しかしそれは、中東に平和と繁栄を約束するものではなかった。それどころか、クーデタ、独裁政治、内戦などが頻発した。

 こうした中で誕生したのが、イスラーム主義である。それは、世俗主義の拡大に対する反動として、西洋的近代化とは異なる「もう1つの近代」を求めるイデオロギーとして、発展していった。

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