2018年4月号掲載
大予測 次に来るキーテクノロジー2018-2019
著者紹介
概要
次に“来る”テクノロジーはこれだ! 身体的特徴や癖などを基に個人を識別する「バイオメトリクス認証」、着るだけで心拍数などの生体データが得られる「スマートクロージング」…。野村総研のアナリストが、先端テクノロジーについて、国内外の先行事例を紹介しつつ展望する。今後のビジネスを考える上で参考になる1冊。
要約
AI(人工知能)が人の仕事を奪う
本書は、「次に来るキーテクノロジー」 ―― 今後の普及が予想される技術として、AI(人工知能)、自動運転、音声操作、チャットボット、VR・AR・MR(仮想現実・拡張現実・複合現実)、バイオメトリクス認証、センシング、ブロックチェーンの8つを解説するものである。
ここでは、その中からいくつかを紹介しよう。
*
まず、AIの現状と今後を展望すると、その進化によって、これまでは人間でなければ無理と思われていた仕事も、次第にAIやロボットによって、部分的には代替可能になりつつある。
例えば、1000人以上の弁護士を抱える米国の大手法律事務所の半数以上が、すでにAIを活用した「リーガルAIツール」を利用している。新人弁護士や「パラリーガル」と呼ばれる補助業務従事者が行うリーガルリサーチ(法律に関する情報の調査)などの作業を、AIが行っているのだ。
また、外資系銀行のトレーダーは、一握りのエリートしか就けない花形の職業だったが、最近では、その地位をAIに奪われつつある。
2017年、ゴールドマン・サックスの前CIO(最高情報責任者)、マーティン・チャベス氏は講演の中で衝撃的な事実を明かした。
「2000年に、ニューヨーク本社に在籍していた600人の株式トレーダーは、今では2人しかいない。…今では日々の取引作業は(AIを活用した)自動取引プログラムが代替している」
同社が自動化を実現した株取引は、機械学習機能を備えたプログラムによって代替が進んでいる。今後は投資銀行業務の自動化にも着手する予定で、さらに社員の数は減る見込みだ。
AIの活用がホットになるにつれ、現在、ウォールストリートで需要が高止まりしているのが、コンピュータ・エンジニアである。金融業界では、「金融の専門家にAIを学ばせるより、AIの専門家に金融を学ばせる方が簡単だ」という半分冗談めいた言葉も頻繁に聞かれる。
これからの金融ビジネスを支えるのはトレーダーではなく、エンジニアになるのかもしれない。