2018年6月号掲載

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益

Original Title :The Darwin Economy

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著者紹介

概要

アダム・スミスは、自由な市場が全ての人に利益をもたらすとした。だが今日、彼の言う「見えざる手」は機能せず、富の格差は広がるばかり。むしろチャールズ・ダーウィンが説いたように、「個の利益」と「集団の利益」は対立している。本書は、この自然科学者の視点を経済に応用。「自然選択」理論を軸に、自由競争の欠点を明らかにする。

要約

麻痺状態

 人々の生活は、昔の方がよかった。例えば、第2次世界大戦後の30年間は、全所得層の所得水準はほぼ同じ割合(年率約3%)で上昇した。ミドルクラスには経済的活力があった。

 だが、その後何十年にもわたって経済成長率は大きく鈍り、富裕層だけが大幅に収入を増やした。ミドルクラスは借金まみれだ。

身動きがとれない政府

 さらに厄介なことに、政治システムが麻痺状態に陥っている。例えば、2008年の金融危機の後、長引く失業に政府が適切に対処できなかった。

 大恐慌時代にジョン・メイナード・ケインズが説明したように、泥沼に陥った経済が自力で急回復することはない。消費者は債務を負い、まだ職があってもその職を失うことを恐れるため、経済回復を先導できない。企業の設備投資も、回復のきっかけにならない。多くの企業がすでに需要を上回る過剰な生産設備を保有しているからだ。

 つまり政府だけが、人々の雇用を生み出すのに十分な需要を喚起する動機と能力をもっていると、ケインズは結論づけている。

 不景気の時、政府は景気刺激策などを講じて経済回復を先導しなければならないが、景気刺激策に反対する人々は、支出は無駄だとして政府を非難する。現在の政治的対話を蝕む無知のせいで、政府は身動きがとれないのである。

「見えざる手」はしばしば機能しない

 リバタリアン(自由至上主義者)は言う。「政府こそが問題であり、規制のない市場があれば問題は解決する」と。

 リバタリアンの世界観の根本にあるのは、アダム・スミスの「見えざる手」理論だ。

 最近のスミスの弟子の多くは、スミスはもっと大胆に、市場は常に個々の利己心を使って社会にとっての最善を生み出すと考えていた、とする。

 だが、スミスは決して「見えざる手」がどんな場合でも良い結果を保証するとは考えていなかった。次の記述に、彼の懐疑心がよく現れている。

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