2018年10月号掲載

アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング

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著者紹介

概要

副題は「心をつかむニューロマーケティング」。ニューロマーケティングとは、脳科学の知見を応用し、より確実で効率的な商品開発などを行うこと。本書では、最新の脳科学が導き出した、ヒットを生み出す法則を公開する。「自分は正しかったと思わせる」「良い気分にさせる」等々、まさに“人の心をつかむ”具体策が語られる。

要約

なぜ「脳を知る」と良いのか?

 2017年度のアップルの純利益は484億ドル(約5兆3000億円)で、世界首位だった。利益規模では3年連続世界トップである。

 だが、約20年前の同社はこうではなかった。業績は低迷し、身売りの噂でもちきりだった。アップルが起死回生を遂げたのは、1997年、スティーブ・ジョブズが復帰して以降だ。iMac、iPod、iPhoneと立て続けにヒットを放った。

 なぜ、こんな飛躍が可能になったのか?

 人々はジョブズの天才的な経営手腕に注目するが、それだけではない。ジョブズが復帰する少し前、アップルはドナルド・ノーマンという著名な認知科学者を招聘した。最も苦しい時期、同社は「人間の『こころ』はどのように働くのか」を真剣に知ろうとしていたのだ。

「深層心理」を解き明かす

 今、市場にはモノが溢れている。そういう厳しい環境で各社がしのぎを削っている。

 競争には情報を握った方が勝つ。その情報の中で最も価値が高いのは、人間が何を好み、どんなモノを欲しがるのかを教えてくれる情報、つまり人間の「こころ」を動かす根本原理である。

 その原理は、アンケート調査などではわからない。なぜなら、人間の本当の気持ちは、言葉で表せない「深層心理」が作り出しているからだ。

 その深層心理が、科学の力で解き明かされつつある。すなわち、脳科学と商品開発やマーケティングの実践が結びついた「ニューロマーケティング」が、この10年余りで大きく進歩したのだ。

時代によって“売り”は変わる

 1960年代の広告がうたったのは馬力や排気量だった。その頃は自動車の「性能」が売りだった。

 それが1970年代には、外見やステイタスに変わり、その後、訴求点は「堅実さ」「安全性」に変わった。2000年代になるとまた一変し、売り文句には「走るよろこび」「自分らしさ」といった言葉が並ぶ。自動車が「良い気持ち」を与えてくれるかどうかが大事になったのだ。

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