2023年5月号掲載

「変化を嫌う人」を動かす ――魅力的な提案が受け入れられない4つの理由

Original Title :The Human Element:Overcoming the Resistance That Awaits New Ideas (2022年刊)

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著者紹介

概要

魅力的なはずのアイデアや新しい製品が、なぜ顧客に受け入れられないのか? それは、アイデアの魅力が足りないせいではない。顧客側に受け入れたくない理由、すなわち「抵抗」があるからだ。本書はこの抵抗を、惰性・労力・感情・心理的反発の4つに分類。それらを乗り越え、人に変化を促す方法を、事例を交え解説する。

要約

惰性:人は既知のものにこだわる

 人々に、新しいアイデアを受け入れてもらうにはどうすればよいだろうか?

 マーケティング担当者やイノベーターなど、変化を生み出すことを仕事にしている人の多くは、ある思い込みのもとに行動している。それは、「アイデアそのものの魅力を高めるのが一番の方法だ」という信念である。付加価値が十分であれば人々は賛同してくれると思う。そのため、アイデアに機能やメリットを付加する。

 しかし、この方法は間違っている。イノベーターたちは魅力を高めることばかりに注意を向け、自分たちが生み出そうとしている変化に逆らう「抵抗」をなおざりにしている。抵抗とは、変化に対抗する心理的な力だ。変化を起こすには、この抵抗を克服する必要がある。

 私たちが世に送り出そうとするアイデアは、次に示す4つの抵抗に押し返される。それは「惰性」「労力」「感情」「心理的反発」である。

 第1の抵抗は「惰性」。

 人は往々にして、新しいアイデアを受け入れることを嫌がる。それは、人間の心は不確実なものや変化より、馴染みのあるものや安定を好むからだ。この特性を惰性と呼ぶ。

新しいアイデアに慣れることで抵抗を和らげる

 惰性を克服するのは簡単だ。よく知らないものを、よく知っているものに変えてやればいい。知れば知るほど、抵抗は和らいでいくからだ。

 例えば、ヘビを見ると恐怖で身体がすくんでしまうヘビ恐怖症の人がいるとする。この恐怖をほんの数時間で克服する方法がある。

 まず、ガラスのケージに入ったヘビがいる別室をマジックミラー越しに見てもらう。最初、患者はヘビの姿を怖がるが、10分もすれば慣れてくる。次は、ヘビのいる部屋の戸口に立ってもらう。これも患者が慣れるまで続ける。続いて、ヘビから3mほど離れた所にある椅子に患者を座らせる。このように段階的に近づいていくと、やがて患者はヘビ恐怖症を克服できる。

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