2019年3月号掲載
西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム
Original Title :THE STRANGE DEATH OF EUROPE:Immigration, Identity, Islam
著者紹介
概要
欧州は自死を遂げつつある ―― 。大量移民を受け入れ続ける欧州の未来に、気鋭の英国人ジャーナリストが警鐘を鳴らした。移民制限を唱える人への誹謗中傷、失われつつある西洋的な文化や価値観。さらには、マスコミがタブー視し、あまり報じられない移民によるレイプの問題などにも斬り込み、移民の受け入れの是非を問う。
要約
「自死」の過程にある西洋文明
欧州は、自死を遂げつつある。少なくとも欧州の指導者たちは、自死することを決意した。現在、欧州に住む人々の大半が生きている間に、欧州は欧州でなくなる ―― 。
少数派になった「白人の英国人」
2012年、英国のイングランドとウェールズにおける国勢調査の結果が発表された(調査の実施は前年)。そこには、過去10年間で英国がどれほど変わったのかが示されていた。
調査によると、両地域での外国生まれの人の数は直近の10年間で約300万人増えた。キリスト教徒の数が3700万人から3300万人へと約400万人も減る一方で、イスラム教徒の数は150万人から270万人へと2倍近くに増えていた。そしてロンドンの住民の中で、自らを「白人の英国人」と回答した人は、わずか44.9%だった。
その国勢調査結果を分析すれば、1つの結論が見えてくる。すなわち、大量移民は英国を全く違うものに変えつつあるということだ。
しかし、「白人の英国人」が少数派になっているという事実に対しては、英国の国家統計局は、大いなる“多様性”の表れだと歓迎している。
政界とメディアの反応も、驚いたことにたった1つのトーンに凝縮されていた。皆、等しく祝福を送ったのだ。
それは何年も前から変わらぬ風潮だった。2007年には当時のロンドン市長が、ロンドンで働く人々の35%が外国生まれであるという事実を誇らしげに語っている。残る問題は、そこに最適な限度があるのかという点だ。
根を張り始めた外国人労働者
英国と同じことは、この数十年の間に西欧のあらゆる国で起こった。第2次世界大戦後、各国が労働力不足を補うために外国人労働者の入国を許し、後には奨励するようになったのだ。
1950~60年代、西ドイツ、オランダ、ベルギーなどの国々が、労働力不足を埋めるために「ゲストワーカー」の施策を導入した。これを利用し、ドイツでは主としてトルコから労働者が流入した。オランダとベルギーにはトルコからだけでなく、北アフリカなどの国々からもやって来た。
だがこの後、欧州各国は同じ思い違いに苦しんだ。その最たるものは、ゲストワーカーが仕事の終了とともに帰国するものと思い込んだことだ。実際には、その大半は入国した国に根を下ろし、家族を呼びよせた。そして、ゲストワーカーの取り決めが終了しても、移民は続いた。
懸念を表明する人々を攻撃する政治家
欧州各国は、戦後の移民問題に関してよく似た体験をした。どの国でも、来ると予想された人数と実際に来た人数の間には常に開きがあった。