2019年4月号掲載
平成はなぜ失敗したのか 「失われた30年」の分析
著者紹介
概要
平成を、経済面から振り返った書である。平成の30年間で、世界経済の大きな変化から取り残された日本経済。平成が“失敗の時代”になった原因を、徹底解明する。バブル崩壊、中国の工業化、IT革命など、世界の大変化をたどり、日本の対応を検証。アベノミクスの失敗にも斬り込む。そして、将来に向けて何をすべきかを示す。
要約
日本人はバブル崩壊に気づかなかった
私たちは、前の世代が築いた日本社会を、世界の動きに合わせて変えていく責任を負っている。
では、その責任を果たせたか? 平成の時代、前の世代の遺産を発展させることができたのか?
残念ながら、それに失敗したと言わざるを得ない。この30年間を一言でいえば、世界経済の大きな変化に日本経済が取り残された時代であった。
ここで重要なのは、努力したが取り残されたのではなく、「大きな変化が生じていることに気がつかなかったために取り残された」ということだ。
1980年代に日本の国際的な地位が高まる
平成に先立つ1980年代は、世界経済における日本の地位が著しく高まった時代である。
70年代の石油ショックで欧米諸国の経済が沈滞する中、日本の経済は成長し、GDP(国内総生産)で米国に次ぐ世界第2位の経済大国となった。
そして80年代後半、不動産価格の異常な上昇が生じた。87年1月の公示地価で東京圏の地価は23.8%上昇し、88年1月には65.3%上昇する。
今振り返れば、これは明らかにバブルである。しかし、当時は、経済の実体的な変化によって引き起こされたものだと考えられていた。
「東京がアジアの金融中心地になる」といわれ、「東京にオフィスを持とうとする企業が世界中から殺到する。だから、地価がいくら上がったところで当然だ」との考えを多くの人が持った。
バブルが崩壊したが、二日酔いから覚めず
1990年代初め、日本経済は天井に突き当たる。株価については、90年(平成2年)が転換の年だった。地価も91年から下がり始めた。
ここで重要なのは、突然の変調は、金融や不動産に限られたものではなかったことだ。企業の売上高や利益も、90、91年度に急に変調した。