2019年4月号掲載
日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年1月24日
- 定価1,650円
- ページ数323ページ
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著者紹介
概要
本書は言う。急激に進む人口減少と高齢化で、2020年以降、日本は深刻なデフレに陥る。量的緩和、ゼロ金利など、常識的な政策は通用せず、三流先進国に成り下がる、と。では、何をすべきか? 日本在住30年、この国を愛する元ゴールドマン・サックスのアナリストが、海外の論文やデータを基に、今必要な“勝算”ある政策を提言。
要約
人口減少を直視せよ
2012年末に発足した第2次安倍晋三内閣は「デフレ脱却」を政策の柱に掲げ、俗にアベノミクスと呼ばれる経済政策を実施した。
確かにアベノミクスによって、行き過ぎた円高が是正され、株価も上昇した。一見すると、日本経済は快方に向かっているように映る。
しかし、今の状態は一時的に成果が出ている踊り場のようなものだ。私は、経済政策を大きく変えなければ、今後これまで以上に深刻なデフレが襲ってくると分析している。
人口減少は最強のデフレ圧力
日本だけではなく、世界的に見ても、人類は高齢化に向かっている。しかし日本の場合、高齢化よりさらに重要な人口の急減少という問題を同時に抱えている。この点が特殊だ。なぜなら、ほとんどの先進国では人口が減少しないからだ。
世界全体では、2060年までに人口が36.1%増加する。アメリカは25.2%増、日本を除くG7は14.9%増。日本は32.1%減で、全く次元が違う。
人口減少は、それだけで強烈なデフレ要因だ。少子高齢化は人口減少によるデフレに拍車をかけ、さらにデフレを深刻化させる。
IMF(国際通貨基金)は2014年、人口増加はインフレ率を大きく引き上げると断言して、そのデータを公表した。逆に、人口が減るとデフレ圧力がかかることになる。高齢者の割合の増加と寿命の長期化も、インフレ率の低下につながっている。
IMFは年代別の人口とインフレの関係も分析しており、65歳以上の人口が増えることそのものがデフレ要因だと断言している。
これらの分析を総合的に考えると、人口減少の方が影響が大きいものの、少子高齢化もデフレ要因になると判断していい。日本の人口動態は、最悪の組み合わせに近いと言っても過言ではない。
企業の生き残り競争、外国人労働者がデフレ圧力に
人口が減ると、学校、食料品、車、住宅等々、人間の数に依存するモノとサービスの需要が減る。
もちろん市場は縮小を余儀なくされるため、企業間の生き残り競争は厳しさを増す。生き残りのための最も安易な戦略は、価格を下げることだ。これも、強烈なデフレ圧力を生むと考えられる。