2019年7月号掲載
トップエコノミストが今を読み解く プラットフォーム経済圏 GAFA vs. 世界
著者紹介
概要
無料のネットサービスを武器に巨利を得る、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)。だが、これらプラットフォーマーの強さに陰りも見える。プライバシー侵害、フェイク(偽)ニュースの拡散などを懸念する各国政府が、規制を強めているのだ。このビジネスモデルの抱える課題について、トップエコノミストが読み解く。
要約
経済学で読み解くプラットフォーマー
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)。これら「プラットフォーマー」が提供するウェブ閲覧・検索、SNS、地図検索などのネットサービスは、日常生活に深く浸透している。
その多くは無料で利用できる。だが、ユーザーは知らず知らずのうちに大きな“対価”を払っていることが次第に明らかとなってきた。
その1つは、プライバシー侵害だ。ユーザーの個人データが本人の知らないところで広告などに利用されている。さらに、2016年の米大統領選挙では、SNSを通じて世論が誘導されるなど、民主主義が根幹から揺るがされる懸念も噴出した。
そうした動きを受け、プラットフォーマーのビジネスに対する規制が各国で高まっている ―― 。
無料サービスのからくり
プラットフォーマーが我々に提供する様々なサービスは、伝統的に民間企業が消費者に提供してきたものとは、かなり異質なもののようにも見える。それは例えば、無料でのサービスの提供だ。
・補完財が謎を解くカギ
無料サービスが、なぜビジネスとして成り立つのか。それは、「補完財」というミクロ経済学の概念を使って説明することができる。
補完財とは、ある財と同時に需要される傾向が強い財のことを指す。例えば、パンとジャムだ。パンの価格が下がるとパンの需要は高まるが、その場合、ジャムの価格は変化しなくても、ジャムの需要も高まることになる。
プラットフォーマーが無料で提供する財・サービスが、他の財・サービスへの需要を高め、利益の増加をもたらすことから、無料サービスを提供することが合理的な企業行動になるのである。
・データ利用も無料サービスを可能に
無料サービスを可能にしているもう1つのメカニズムは、「付加価値のあるデータ活用」だ。
プラットフォーマーのサービスでは、ユーザーによって大量の情報、データが作られている。例えば「ネットショッピングでの商品の購入履歴」「SNS上で投稿されるコメント」などだ。
プラットフォーマーは、これらを自らのビジネスに利用できる。例えば、ネット販売で消費者に提供する商品を決める際の材料にできる。また、個人データを他企業に販売することもできる。