2019年8月号掲載

幸せな職場の経営学 「働きたくてたまらないチーム」の作り方

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著者紹介

概要

「幸福学」をご存じだろうか。幸せとは何かを科学的に検証し、実践に生かすための学問だ。その第一人者が従業員を幸せにする職場づくりを説く。今後求められるのは、「個人の幸せ」と「皆の幸せ」の両方を大切にする「ウェルビーイングな組織」。社員1人1人が輝きつつ協力し、社長と同じ気持ちで仕事をする組織が強いという。

要約

幸福とは何か

 かつては、経済的な豊かさや仕事での成功、社会的な地位で幸せを感じる人が大多数だった。

 ところが、バブル崩壊後、時代の変遷とともに、いわゆる「カネ・モノ・地位」に本質的な幸せは見いだせない、と気づく人が増えた。

カネ・モノ・地位による幸せは長続きしない

 アメリカの経済学者ロバート・フランクは、他者との比較優位によって価値が生まれ、満足を得られる財を「地位財」、他者との比較ではなく、それ自体に価値があり、喜びにつながる財を「非地位財」と分類した。地位財は、役職や所得などの社会的地位や、家や車などの物的財。一方、非地位財は、愛情や自由、健康などである。

 2005年、イギリスの心理学者ダニエル・ネトルは、地位財による幸せは長続きしないが、非地位財による幸せは長続きする、と指摘した。

 つまり給料が上がったり、昇格したりした時などに得られる幸福感は持続しないが、家族や友人と共に過ごしたり、趣味に没頭したりすることで、人は長期的な幸福感を得られる、という。

 それでも人はつい、目に見えてわかりやすい地位財を手に入れることに懸命になってしまう。

収入と幸せの関係

 行動経済学者ダニエル・カーネマンは、このような人の欲求を「フォーカシング・イリュージョン」と呼ぶ。イリュージョン(幻想)にフォーカシングする。つまり、間違った方向に焦点を当て、それを目指してしまうという意味だ。

 さらにカーネマンらは、「感情的幸福」は年収7万5000ドル(約825万円)までは収入に比例して増大するが、それを超えると比例しなくなる、と言う。ある一定の所得を超えれば、その後、どれだけ所得が増えても、感情的な幸福度は変化しないということだ。

 

幸せを構成する4つの因子

 「幸せ」の英訳は、一般的には「happiness」である。だが、happinessは「幸せ」というより、「楽しい」「嬉しい」といった短期的な感情としての幸せの意味合いが強い。

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(編) ダイヤモンド社