2019年12月号掲載
超約 ヨーロッパの歴史
Original Title :The Shortest History of Europe
著者紹介
概要
今、ブレグジットや移民問題で揺れるヨーロッパ。その文明の本質を知り、グローバルな教養を身につけるための「最も短い欧州史」だ。ヨーロッパ文明を大胆に、「古代ギリシャ・ローマ文化」「キリスト教」「ゲルマン戦士」に絞り込んで考察。これら3つの要素が“絆”を結ぶことで、独特なヨーロッパ文明が形成されたと語る。
要約
ヨーロッパの誕生:3つの要素
ヨーロッパの文明は独特だ。なぜなら、その文明をそれ以外の世界に強要してきた唯一の文明だからだ。征服と入植、あるいは経済や知の力、そしてモノの力により、「押し付け」は達成された。
今日ではすべての国が、ヨーロッパ文明から生まれた科学的発見とテクノロジーを用いている。
ヨーロッパ文明は、その発端において次の3要素で構成された。言わば、1つの混合物である。
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- ①古代ギリシャ・ローマの文化
- ②ユダヤ教の分家であるキリスト教
- ③ローマ帝国に侵入したゲルマン戦士の文化
各要素を順に見ていこう。
第1の要素:古代ギリシャとローマ
哲学、芸術、文学、数学、科学、医学、政治思想 ―― これらすべての知的行為は、その起源へと遡ると古代ギリシャに辿りつく。
ギリシャはその偉大なる栄光にあった時代、単一国家ではなかった。それは、現在の視点では都市国家と呼ばれる、小国家の集合体だった。
ギリシャは人口が増加するにつれ、地中海世界に植民市を作り、人々を送り込むようになった。イタリアにはローマ人がいたが、彼らはギリシャ人から学び、やがてギリシャを呑み込む巨大な帝国を築く。ローマ人は戦闘、また立法面でもギリシャ人を上回り、帝国を法律によって支配した。
だがローマ人は、ギリシャ人は自分たちよりも優れている、ということを認めていた。
ギリシャ人の優秀さを証明するわかりやすい例は、幾何学である。幾何学の仕組みは、数少ない基本定義とそれらの組み合わせでできている。
最初は「点」だ。ギリシャ人は点を「位置を示すのみで、大きさを持たないもの」と定義づけた。もちろん点には大きさがある。だが、幾何学とは一種の想像の世界ないし純粋世界なのである。
次が「線」で、線は「長さを持つが、広がりを持たない」。さらに「直線」は、「2つの点を結ぶ最短の線」とされる。こうした方法で、三角形や正方形などの基本形も定義づけることができる。