2020年3月号掲載
リベラリズムの終わり その限界と未来
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年11月30日
- 定価924円
- ページ数238ページ
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著者紹介
概要
米国のトランプ現象に見られるように、近年、「リベラリズム」に対する風当たりが強い。個人の自由の尊重、弱者救済といった主張が、なぜ嫌われるのか? 気鋭の哲学者が、リベラリズムを適用できない現代社会の実情、思想的限界を考察する。フェアネス(公平さ、公正さ)という、この思想の最良の部分を活かすために ―― 。
要約
リベラリズムを徹底できるのか?
ここのところ、「リベラル」といわれる人たちへの風当たりが強くなっている。
リベラルとは、「個人の自由を尊重する立場」の人たちを指す言葉だ。個人の自由を尊重するがゆえに、それを阻むもの、例えば権力の濫用や不平等などを厳しく批判する。そうした立場の人たちが、リベラル、リベラル派などと呼ばれる。
その「自由を尊重する立場」の人たちが、なぜ強い批判にさらされるようになっているのか?
同性婚を認めた判決が引き起こした小さな波紋
米国モンタナ州に住むネイサン・コリアーは2015年6月、郡の役場に2人目の妻、クリスティーンとの婚姻届を提出した。
彼が2人目の妻との婚姻届を提出したきっかけは、その数日前に連邦最高裁判所が下した判決にあった。連邦最高裁は2015年6月、同性カップルは結婚する権利を持つという判決を下したのだ。
この時、次のような反対意見もあった。「同性婚を認めると、一夫多妻も同じ議論になる」。
ネイサンはこの反対意見を聞き、一夫多妻婚も同性婚と同じように結婚の平等にあたると考えて、2人目の妻との婚姻届を提出したのである。
個人の自由とリベラリズム
役場は、2人目の妻との婚姻を認めるべきか?
ポイントとなるのは、「同性婚が認められる以上、一夫多妻婚も認められるべきではないか」という問いである。この問いに、「同性婚は認められるべきだが、一夫多妻婚は認められるべきではない」と答えることは難しい。
同性婚は近年、欧米諸国を中心に法的に認められるようになってきた。その背景には、リベラリズムの考えが社会により浸透してきたことがある。
すなわち、本人たちがそれを望み、かつその結婚が誰にも危害や損害を与えないのであれば、本人たちの自由を尊重すべきだ、という考えである。この「できる限り個々人の自由を尊重すべきだ」という考えが、「リベラリズム(自由主義)」と呼ばれる。