2020年4月号掲載
幸福の意外な正体 なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか
Original Title :Happiness:The Science Behind Your Smile
著者紹介
概要
心理学者が説く、幸福学である。その指摘は、まさに目からウロコ。「自分が欲しいと願うもの」=「幸せをもたらすもの」ではない、幸せへの期待が不幸せを招きかねない…。各種の研究からわかった、意外で興味深い事実を示す。また、幸福度が高まるトレーニングなども紹介。自分自身の幸福をつかむ上で、示唆に富む書だ。
要約
幸せな人って、どんな人?
幸せなのは、どんな人なのか?
生活に愛がある人か、仕事が充実している人か、それとも崇高な目的に献身する人なのか ―― 。
幸福度の自己評価と健康の関係
最も明白なのは、幸福度と健康の関係だ。
修道女を対象とした、米国の調査がある。最初に修道誓願を立てる時に書く自伝的な文章から、彼女らがどの程度ポジティブな感情を表現しているかを評価し、その平均余命を調べたものだ。
調査の結果、自伝文の中でよりポジティブな感情を表現していた、上位25%の人々のうち90%が、85歳になっても健在だった。逆にポジティブな感情表現に乏しかった25%は、85歳まで生きた人が34%しかいなかった。
この他にも、ポジティブな感情志向が心身の健康につながることを示す研究は多い。
人生は自分で管理する
英国では、国民生活に関する大規模な実態調査が定期的に行われている。その1つに「全国児童発達調査」がある。これは1958年3月3日~9日の間に生まれたすべての人を、現在にいたるまで徹底的に調べたものだ。
この調査の中に、自主性に関する問いがある。
自主性は、所得以上に幸福につながりやすい。国民所得分布の中で所得が低い方から25%に入っているのに自主性評点の高い人と、逆に、所得が高い25%に入りながらも自主性評点の低い人を比べた時、このことの重要さがわかる。
貧しくも自由を得ているグループが生活満足度7.85の高水準を記録したのに対し、裕福ながら自由がないグループは5.82と満足度が低いのだ。
このことからわかるように、裕福でも生活を自分で管理できる機会が与えられて初めて、幸せを感じられる。逆に所得が低くても、自分で生活を管理できれば、やはり幸せだと思えるのである。