2020年7月号掲載

仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実

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著者紹介

概要

このところ、AIブームが過熱気味だ。機械学習によって高精度の予測を行うディープラーニング、また自動運転技術などの急速な進化が耳に入る。片や、AIによる雇用破壊を危惧する声も聞かれる。プラスとマイナス、両方のイメージがあるが、実際はどうなのか。仕事におけるAI技術の現状、未来を客観的に分析し、伝える。

要約

ディープラーニングの現状

 ディープラーニング、自動運転技術、ヒト型ロボット…。近年、AI(人工知能)がブームである。そしてAI万能論、AIによる雇用破壊など、プラスとマイナス両方のイメージが社会に形成された。

 実際のところ、今、AIはどんなフェーズにあるのだろうか?

「AIの教師」という新しい職業

 最近、インドや中国などで、新しく生まれた職業がある。それは「AIの教師」だ。

 例えば、インドのある企業の女性従業員は、外国の病院から送られてきたビデオでAIを教育している。ビデオには、大腸の内壁が写っている。がんになりそうなポリープを見つけると、マウスで丸く囲み、「ポリープ」と入力。これによってAIに「これはポリープ」と教えたことになる。

 彼女は朝から晩まで、この作業を行う。そして、AIは様々な形状や色合いのポリープを学び、やがては自力で大腸がん等の画像診断を行う「デジタル・ドクター(自動診断用AI)」になる。

AI産業を陰で支える単調な仕事

 では、なぜ、こんな単調作業が必要なのか? その理由は、AIの原理とその開発方法にある。

 今、最も普及しているAI技術は「ディープラーニング」あるいは「ディープ・ニューラルネット」と呼ばれる人工知能だ。これは「機械学習」と呼ばれる手続きによって訓練される必要がある。

 この機械学習には「教師有り学習」や「教師無し学習」など何種類かあるが、現在までに世界全体で開発されたディープラーニングの9割以上は教師有り学習に従っている。この方式では、人間が大量の画像データ等を教材にして、「これは何々です」とAIシステムに教え込んでいく。

ヒトがやりたくない仕事をロボットに

 IT企業など多種多様な企業が今、AIやロボットを使ってやろうとしているのは、様々な仕事を自動化することだ。これらは「ジョブ・オートメーション(仕事自動化)」技術と総称される。

 実際、「きつい、汚い、危険」 ―― いわゆる3K労働などは、AIを搭載したロボットによって置き換えられようとしている。

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