2020年7月号掲載
仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年4月20日
- 定価990円
- ページ数272ページ
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著者紹介
概要
このところ、AIブームが過熱気味だ。機械学習によって高精度の予測を行うディープラーニング、また自動運転技術などの急速な進化が耳に入る。片や、AIによる雇用破壊を危惧する声も聞かれる。プラスとマイナス、両方のイメージがあるが、実際はどうなのか。仕事におけるAI技術の現状、未来を客観的に分析し、伝える。
要約
ディープラーニングの現状
ディープラーニング、自動運転技術、ヒト型ロボット…。近年、AI(人工知能)がブームである。そしてAI万能論、AIによる雇用破壊など、プラスとマイナス両方のイメージが社会に形成された。
実際のところ、今、AIはどんなフェーズにあるのだろうか?
「AIの教師」という新しい職業
最近、インドや中国などで、新しく生まれた職業がある。それは「AIの教師」だ。
例えば、インドのある企業の女性従業員は、外国の病院から送られてきたビデオでAIを教育している。ビデオには、大腸の内壁が写っている。がんになりそうなポリープを見つけると、マウスで丸く囲み、「ポリープ」と入力。これによってAIに「これはポリープ」と教えたことになる。
彼女は朝から晩まで、この作業を行う。そして、AIは様々な形状や色合いのポリープを学び、やがては自力で大腸がん等の画像診断を行う「デジタル・ドクター(自動診断用AI)」になる。
AI産業を陰で支える単調な仕事
では、なぜ、こんな単調作業が必要なのか? その理由は、AIの原理とその開発方法にある。
今、最も普及しているAI技術は「ディープラーニング」あるいは「ディープ・ニューラルネット」と呼ばれる人工知能だ。これは「機械学習」と呼ばれる手続きによって訓練される必要がある。
この機械学習には「教師有り学習」や「教師無し学習」など何種類かあるが、現在までに世界全体で開発されたディープラーニングの9割以上は教師有り学習に従っている。この方式では、人間が大量の画像データ等を教材にして、「これは何々です」とAIシステムに教え込んでいく。
「教育」といえば聞こえは良いが、実際には多数の労働者が大量の写真やビデオ映像に、延々と丸印を付けていく単調作業だ。これが、現代のAI産業を陰で支える労働現場の実態なのだ。
ヒトがやりたくない仕事をロボットに
IT企業など多種多様な企業が今、AIやロボットを使ってやろうとしているのは、様々な仕事を自動化することだ。これらは「ジョブ・オートメーション(仕事自動化)」技術と総称される。
実際、「きつい、汚い、危険」 ―― いわゆる3K労働などは、AIを搭載したロボットによって置き換えられようとしている。